昔、某アイドルグループのミニライブ&握手会に行った事がある。

とある駅で降りたったものの、徒歩10分くらいの道が分からず迷ってしまい、時間が迫っていたため走った事もあり、涼しい風も吹く気温の中、会場に着く頃にはひとり汗だくで、息が上がっていた。

ただライブ中は、盛り上がり飛び跳ねる周りの観客をよそに、ひとり冷静沈着に静かな顔で佇んでいたのも、僕だ。

ミニライブが終わり、相手に失礼があってはと、ミンティアを口に入れたが、誤って12粒くらいを一気に口に入れたため、会場でひとり涙ぐんでいたのも、僕だ。

12人前後のアイドルグループの列に並び、いざアイドルとの握手の時に、思わず緊張してしまい、頑張って下さい。の一言が言葉にならず、口パクになったのも、僕だ。

涙目で口パクをする僕にも優しく返答してくれたアイドルは、きっと読唇術をマスターしていたに違いない。

たまたまその時、指に負傷をしていてバンドエイドを巻いていたため、握手をする度にアイドル達が、びくっと反応していたのを見逃さなかった。

バンドエイドを外すべきだったと、後悔した。

目的を果たし会場を出て帰路に着く頃には、薄っすらと陽もかげって来ていた。

秋を迎えるそよ風を、その時に感じた。