『カシスウー論』 ~浜松のひつまぶし『とろろや』編~
こんにちは 菓子酢ウーロンです。
第14回『カシスウー論』は、浜松にあるひつまぶしのお店『とろろや』編です。
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浜松には「メイワン」という駅ビルがある。
そのなかに洋服屋、雑貨屋、レストランなどがいくつも入っていて、今回紹介する『とろろや』もその一つである。
ベースはひつまぶし屋なのだが、それに「とろろ」というアクセントが加わる。
本来、ひつまぶしというと「単なるうなぎご飯」「薬味を入れる」「お茶漬けにする」と3度おいしいというものだが、
『とろろや』では、さらにとろろが付いてきて、「とろろ・うなぎご飯」という4度目がある。
「4度目、サイコー!」というよりは、「ああ、なるほどね」という程度だが、
まあ、一度くらいは食べてみてもいいのではないだろうか。
「メイワン」はさすが地方の駅だけあって、1階はたっぷり「みやげ物コーナー」となっている。
ここで静岡名物「うなぎパイ」を買うことができるわけだ。
「浜松に来たので、一応ね・・・」という具合に、私もうなぎパイを買って帰った。
昔から、うなぎパイは「夜のお菓子」ということになっているが、
あんなものを食べたくらいで、精力は微塵もアップしないというのが、個人的な感想である。
うなぎパイ前と、うなぎパイ後の精力比較をしたわけではないが、
「夜のお菓子を食べたぞ、うりゃあぁぁ!」というほど、際立った効果がなかったことだけは間違いない。
この「夜のお菓子」には、うなぎエキスが入っているとのことだが、
そもそも、うなぎエキスってなんなんだ!
ニュルニュルのうなぎをギュッと握って、
雑巾を絞るみたいにグルグルねじって、ジュルジュル~とエキスを抽出するのだろうか。
想像しただけで、かなり気持ち悪いが、
それだけ気持ち悪いエキスが入っているなら、多少の効果はあるのかもしれない、と無理やりに納得しておこう。
すっぽんにしろ、ハブにしろ、精のつくものはグロテスクで、気持ち悪いと相場が決まっているのだ。
うなぎパイについて詳しく語るつもりはないが、
どうせ買うなら、「うなぎパイ VSOP」というグレードアップバージョンをおすすめする。
「夜のお菓子」としての効果のほどはしらないが、ナッツの風味と歯ごたえがしっかりあって、通常版よりけっこうおいしい。
浜松へはある取材のために訪れたのだが、
東京・浜松間を新幹線で移動するのは、じつにちょうどよい時間である。
かかる時間は1時間半。
席に座って本でも読んでいれば、あっという間に到着してしまう。
駅弁を持ち込んでいる人なら、
外の景色を眺めながら、のんびり食事をして、
「たまには駅弁もいいもんだなぁ」なんて、無理やり感慨に浸っていれば、いい具合で浜松に到着する。
浜松には「のぞみ」が停車せず、たいていの人が「ひかり」を利用するため、
意外に混んでいるのが難点だが、それを除けばじつに快適である。
私が浜松へ向かったのときも、平日の午前11時くらいだったが、指定席はほぼ満席だった。
私が乗り込んだ時点で空いていた隣の席にも、新横浜ですぐに人が乗ってきた。
乗ってきたのは50代と思われるスーツ姿の男性だった。
これから出張へ向かうのかと思いきや、そのオッサンからは「いかにもひと仕事終えた帰り」という雰囲気がムンムン漂っていた。
キャスター付きのキャリーケースをガラガラと引きずって、
もう片方の手には横浜のおみやげらしき紙袋をぶら下げている。
全身からは、心地よい疲れを発散しつつ、仕事を終えた安堵と充実がこぼれていた。
きっと彼は昨日のうちに横浜へ出張し、上々の成果を上げたのだろう。
今日も、朝イチから何かしらの交渉ごとを一件こなし、これから帰るというスケジュールになっているのだ。
(あくまで私の憶測だが、おおむね間違いないだろう)
朝イチからのアポイントで朝食を食べる暇はなかったが、空腹のピークを迎えるころには帰路の新幹線の中。
グリーン車でゆったりブランチというわけにはいかないが、
少しばかり贅沢な弁当を買って、のんびり食べるという算段だ。
お楽しみの前の最後の大仕事とばかり、彼は重たいキャリーケースを網棚の上に乗せようと持ち上げた。
しかし、手に持った缶ビールとお弁当が邪魔だったので、座席に備え付けの簡易テーブルを引き出して、その上に置こうとした。
ところが、お弁当とビールの両方をテーブルに置くのはどうにも不安定だ。
そこで彼は、大事なお弁当のほうを自分の座席の上に置いたあと、キャリーケースを持ち上げる作業に戻った。
何と言ったらいいのだろう・・・
そのあたりから私は、何かよくないことが起こるような不穏な空気を感じていた。
私はどちらかというと意地悪な性格で、人の失敗を期待するようなところがある。それは認める。
でも、さすがにオッサンには滞りなく、楽しい食事をさせてあげたいと思っていた。これは本当だ。
50過ぎのオッサンが、新幹線で弁当を楽しみにしているなんて、
なかなかチャーミングなシチュエーションではないか。
たまの出張でしっかり成果を上げたとなれば、昼間から缶ビールの一本も飲みたくなるのも当然だ。
がんばれ、オッサン。
重たいキャリーケースを片付ければ、後は楽しいお弁当だ!
私は心のなかで、けっこうマジメに応援したのだが、
残念ながら、私の応援は往々にして神様に無視される。
相当重い荷物なのか、オッサンは網棚の上に乗せる作業にかなり手間取っていた。
私は窓側に座っていたので、落ちてくるんじゃないかと冷や冷やしながら、
「手伝ったほうがいいかな・・・」なんて考えていたが、この手の気遣いはどうにもタイミングがむずかしい。
そんな逡巡をしているうちに、オッサンは最後の力を振り絞り、
重たいキャリーケースを網棚の奥へと押しやった。
これですべての作業が完了した。
あとは、楽しいお弁当タイムを残すのみ!
きっと彼もそう思ったのだろう。
もしくは、難敵だったキャリーケースをやっつけたという興奮が残っていたのだろうか。
じつに残念なことに、(あるいは私の予感がそう示唆していた通り)
オッサンは大事な弁当を置いたままの座席に、勢いよくドスンと座ってしまったのだ。
私はその一部始終を黙ったまま見守っていた。
勢いよく座ったオッサンは、トランポリンに弾んだみたいにすぐにお尻を浮かせたが、
起きてしまった事態を、元に戻すことはできない。
新幹線の座席から飛び跳ねる50過ぎのオッサンを初めて見たが、
さすがに、その場では笑えなかった。
その後、オッサンは恐る恐る弁当を開け、その無残な光景にひときわ悲しそうな表情をした。
オッサンが楽しみにしていたのは、すき焼き弁当だった。
何弁当でも悲惨なことに変わりはないのだが、
「すき焼き弁当」というプチ贅沢感が、何とも言えない悲しみを増幅させた。
一番被害が大きかったのは、言うまでもなく焼き豆腐である。
一撃のヒップアタックによってボロボロに崩れた焼き豆腐を、オッサンは丁寧に箸でつまんみ、注意深く口に運んでいた。
米を一粒ずつ運ぶみたいな、ちまちまとして、時間のかかる作業だった。
そんなゆっくり食べてたら、食べ終わる前に浜松に着いちゃうぞ!
と私は心配になったが、よく考えたら、オッサンが浜松で降りると決まったわけではない。
せめて、ゆっくり食事をさせてあげたい。
私は「オッサンの心の傷を癒し、ゆっくりと食事を終えるだけの時間を確保してください」と神に祈ったが、
またしても神様は私の祈りをスルーした。
「まもなく、静岡に到着します」というアナウンスが流れると、
オッサンは食べかけの弁当をそそくさと片付け始め、
せっかく持ち上げたキャリーケースを下ろす作業に取りかかった。
ちなみに、静岡は浜松の一つ手前である。
満足に食べることができなかったオッサンはがっくりと肩を落とし、
重たいキャリーケースを引きずりながら、静岡駅で降りていった。
あの弁当はどうしただろうか。
やっぱり、捨てちゃったかな。そりゃ、捨てちゃうよね。
もし、静岡駅のベンチに座って、ボロボロのすき焼き弁当の続きを食べてたら、
それこそ悲しすぎるもんね。
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第14回『カシスウー論』は、浜松にあるひつまぶしのお店『とろろや』編です。
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浜松には「メイワン」という駅ビルがある。
そのなかに洋服屋、雑貨屋、レストランなどがいくつも入っていて、今回紹介する『とろろや』もその一つである。
ベースはひつまぶし屋なのだが、それに「とろろ」というアクセントが加わる。
本来、ひつまぶしというと「単なるうなぎご飯」「薬味を入れる」「お茶漬けにする」と3度おいしいというものだが、
『とろろや』では、さらにとろろが付いてきて、「とろろ・うなぎご飯」という4度目がある。
「4度目、サイコー!」というよりは、「ああ、なるほどね」という程度だが、
まあ、一度くらいは食べてみてもいいのではないだろうか。
「メイワン」はさすが地方の駅だけあって、1階はたっぷり「みやげ物コーナー」となっている。
ここで静岡名物「うなぎパイ」を買うことができるわけだ。
「浜松に来たので、一応ね・・・」という具合に、私もうなぎパイを買って帰った。
昔から、うなぎパイは「夜のお菓子」ということになっているが、
あんなものを食べたくらいで、精力は微塵もアップしないというのが、個人的な感想である。
うなぎパイ前と、うなぎパイ後の精力比較をしたわけではないが、
「夜のお菓子を食べたぞ、うりゃあぁぁ!」というほど、際立った効果がなかったことだけは間違いない。
この「夜のお菓子」には、うなぎエキスが入っているとのことだが、
そもそも、うなぎエキスってなんなんだ!
ニュルニュルのうなぎをギュッと握って、
雑巾を絞るみたいにグルグルねじって、ジュルジュル~とエキスを抽出するのだろうか。
想像しただけで、かなり気持ち悪いが、
それだけ気持ち悪いエキスが入っているなら、多少の効果はあるのかもしれない、と無理やりに納得しておこう。
すっぽんにしろ、ハブにしろ、精のつくものはグロテスクで、気持ち悪いと相場が決まっているのだ。
うなぎパイについて詳しく語るつもりはないが、
どうせ買うなら、「うなぎパイ VSOP」というグレードアップバージョンをおすすめする。
「夜のお菓子」としての効果のほどはしらないが、ナッツの風味と歯ごたえがしっかりあって、通常版よりけっこうおいしい。
浜松へはある取材のために訪れたのだが、
東京・浜松間を新幹線で移動するのは、じつにちょうどよい時間である。
かかる時間は1時間半。
席に座って本でも読んでいれば、あっという間に到着してしまう。
駅弁を持ち込んでいる人なら、
外の景色を眺めながら、のんびり食事をして、
「たまには駅弁もいいもんだなぁ」なんて、無理やり感慨に浸っていれば、いい具合で浜松に到着する。
浜松には「のぞみ」が停車せず、たいていの人が「ひかり」を利用するため、
意外に混んでいるのが難点だが、それを除けばじつに快適である。
私が浜松へ向かったのときも、平日の午前11時くらいだったが、指定席はほぼ満席だった。
私が乗り込んだ時点で空いていた隣の席にも、新横浜ですぐに人が乗ってきた。
乗ってきたのは50代と思われるスーツ姿の男性だった。
これから出張へ向かうのかと思いきや、そのオッサンからは「いかにもひと仕事終えた帰り」という雰囲気がムンムン漂っていた。
キャスター付きのキャリーケースをガラガラと引きずって、
もう片方の手には横浜のおみやげらしき紙袋をぶら下げている。
全身からは、心地よい疲れを発散しつつ、仕事を終えた安堵と充実がこぼれていた。
きっと彼は昨日のうちに横浜へ出張し、上々の成果を上げたのだろう。
今日も、朝イチから何かしらの交渉ごとを一件こなし、これから帰るというスケジュールになっているのだ。
(あくまで私の憶測だが、おおむね間違いないだろう)
朝イチからのアポイントで朝食を食べる暇はなかったが、空腹のピークを迎えるころには帰路の新幹線の中。
グリーン車でゆったりブランチというわけにはいかないが、
少しばかり贅沢な弁当を買って、のんびり食べるという算段だ。
お楽しみの前の最後の大仕事とばかり、彼は重たいキャリーケースを網棚の上に乗せようと持ち上げた。
しかし、手に持った缶ビールとお弁当が邪魔だったので、座席に備え付けの簡易テーブルを引き出して、その上に置こうとした。
ところが、お弁当とビールの両方をテーブルに置くのはどうにも不安定だ。
そこで彼は、大事なお弁当のほうを自分の座席の上に置いたあと、キャリーケースを持ち上げる作業に戻った。
何と言ったらいいのだろう・・・
そのあたりから私は、何かよくないことが起こるような不穏な空気を感じていた。
私はどちらかというと意地悪な性格で、人の失敗を期待するようなところがある。それは認める。
でも、さすがにオッサンには滞りなく、楽しい食事をさせてあげたいと思っていた。これは本当だ。
50過ぎのオッサンが、新幹線で弁当を楽しみにしているなんて、
なかなかチャーミングなシチュエーションではないか。
たまの出張でしっかり成果を上げたとなれば、昼間から缶ビールの一本も飲みたくなるのも当然だ。
がんばれ、オッサン。
重たいキャリーケースを片付ければ、後は楽しいお弁当だ!
私は心のなかで、けっこうマジメに応援したのだが、
残念ながら、私の応援は往々にして神様に無視される。
相当重い荷物なのか、オッサンは網棚の上に乗せる作業にかなり手間取っていた。
私は窓側に座っていたので、落ちてくるんじゃないかと冷や冷やしながら、
「手伝ったほうがいいかな・・・」なんて考えていたが、この手の気遣いはどうにもタイミングがむずかしい。
そんな逡巡をしているうちに、オッサンは最後の力を振り絞り、
重たいキャリーケースを網棚の奥へと押しやった。
これですべての作業が完了した。
あとは、楽しいお弁当タイムを残すのみ!
きっと彼もそう思ったのだろう。
もしくは、難敵だったキャリーケースをやっつけたという興奮が残っていたのだろうか。
じつに残念なことに、(あるいは私の予感がそう示唆していた通り)
オッサンは大事な弁当を置いたままの座席に、勢いよくドスンと座ってしまったのだ。
私はその一部始終を黙ったまま見守っていた。
勢いよく座ったオッサンは、トランポリンに弾んだみたいにすぐにお尻を浮かせたが、
起きてしまった事態を、元に戻すことはできない。
新幹線の座席から飛び跳ねる50過ぎのオッサンを初めて見たが、
さすがに、その場では笑えなかった。
その後、オッサンは恐る恐る弁当を開け、その無残な光景にひときわ悲しそうな表情をした。
オッサンが楽しみにしていたのは、すき焼き弁当だった。
何弁当でも悲惨なことに変わりはないのだが、
「すき焼き弁当」というプチ贅沢感が、何とも言えない悲しみを増幅させた。
一番被害が大きかったのは、言うまでもなく焼き豆腐である。
一撃のヒップアタックによってボロボロに崩れた焼き豆腐を、オッサンは丁寧に箸でつまんみ、注意深く口に運んでいた。
米を一粒ずつ運ぶみたいな、ちまちまとして、時間のかかる作業だった。
そんなゆっくり食べてたら、食べ終わる前に浜松に着いちゃうぞ!
と私は心配になったが、よく考えたら、オッサンが浜松で降りると決まったわけではない。
せめて、ゆっくり食事をさせてあげたい。
私は「オッサンの心の傷を癒し、ゆっくりと食事を終えるだけの時間を確保してください」と神に祈ったが、
またしても神様は私の祈りをスルーした。
「まもなく、静岡に到着します」というアナウンスが流れると、
オッサンは食べかけの弁当をそそくさと片付け始め、
せっかく持ち上げたキャリーケースを下ろす作業に取りかかった。
ちなみに、静岡は浜松の一つ手前である。
満足に食べることができなかったオッサンはがっくりと肩を落とし、
重たいキャリーケースを引きずりながら、静岡駅で降りていった。
あの弁当はどうしただろうか。
やっぱり、捨てちゃったかな。そりゃ、捨てちゃうよね。
もし、静岡駅のベンチに座って、ボロボロのすき焼き弁当の続きを食べてたら、
それこそ悲しすぎるもんね。
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