今日約束の1ヶ月後の意見交換の日です。
朝礼の時間となり、現場に課長が現れた。
「おはようございます」
「おはようございます」
作業者が、真っ先に口火を斬りました。
「課長、約束の日です、私達今日からは
従来通りヘルメット無しで作業を行いますよ!」
「私達は、課長との約束を守りヘルメットを被って
作業を行いましたが、やはり1ヶ月前の時と
我々の気持ちは変わりませんでした。」
「我々の現場の作業では、ヘルメットは要らないです!」
「課長は、私達がヘルメットを要らないと判断したら
2度とヘルメットを被れとは言わないと言いましたよね!」
課長は、作業者の意見を真剣に聞き入っています。
「我々の職場は、確かに労災が多いのは確かですが、
怪我をして自分の作業の悪さが分かる事もあるのです!」
「皆、そうやって一人前になって、後輩に指導しているの
です、分かりますか課長!」
ようやく、課長が話し始めた。
「皆さんの意見は分かりました。」
「じゃ!もうヘルメットは被らなくていいな!」
「いいえ!」
「約束が違うじゃないかっ!」
「皆さん、自分が被ったヘルメットを自分の前に置いて
下さい。」
「なんだよー!」
課長は、ヘルメットを一個一個手に取りながら話し始め
ました。
「ん~!ここの傷見てください、この傷は深いですね。
もし、ヘルメットを被っていなかったら大変な事になって
ましたね。」
「君のヘルメットは、傷がいっぱい入ってますね!」
「良かったですね! ヘルメット被っててね!」
「君のも、深い傷がここにも、ここにも有りますよ!」
課長は、全てのヘルメットを手に取り作業者にヘルメット
に付いた傷を見せて、話をしていきました。
「皆さん、どうですか?」
作業者達は、現実を見せられて、さっきまでの
勢いが無くなって何も言えなくなっていました。
作業者達は、ヘルメットの傷を見せられて、もし被って
いなかったらと想像すると皆、頭が痛くなってきた
感覚になってきました。
ある1人の作業者が、
「ヘルメットに、助けられてるな!」
「ん~!確かになぁ~」
「お前のヘルメットの傷、これはいかんぞ!」
「どれどれ、わっー!これは酷いな!」
「出血多量で死んどるなぁ~!」
「うるっせー!」
はっはっはっ~!
課長の口が開きました
「皆さん、ヘルメットは要らないですか?」
作業者達は、気まずそうに
「いや~ 要らないとは思わないなぁ~」
「せっかく、新しい課長が来た事だし、最初から
逆らうのも悪いからなぁ~」
「そうだな! じゃ ヘルメットを被るという事で」
「それでは、決まりましたね。」
「では、ヘルメットを被って作業を行って下い」
「はい!」
ここで、課長の秘策を紹介します。
課長はヘルメットを白いペンキで塗った物を
作業者に与えました、それは傷がはっきり
分かる要にする為だったのです。
この日から、この職場からの労働災害が
激減しました、さらに新人が入ってくると
先輩達は、ヘルメットの重要性をここんと
新人に説明するようになりました。
ここで一番重要なのは、ヘルメットを薦めた課長
がこの職場から他の職場に移動になって居なくなって
も、作業者達は自らヘルメットを被って作業を行う
なっている事です。
普通なら、口うるさい課長が居なくなると、直ぐに
元の姿に戻って、ヘルメットを被らなくなるのですが、
課長から、頭ごなしででは無く、ヘルメットの重要性
を身をもって教えてもらい、全ての作業者が納得を
したからこその状態ですね。
この話は、数十年前にある研修を受けた時、
講師の方が実例としてお話し下さった話を
元に書きました事を報告しておきます。
私は、未だに忘れられないお話の一つです。