「あ」
乾がふいに間の抜けた声を上げて空を見上げたのでつられて見てみると、青空に一つ、赤い風船が飛んでいた。
まるで目指す場所を知っているかのように上へ上へと飛んでいく赤い丸を見上げる乾の口は半開きで、ちょっと間抜けだと赤也は思う。
でもそれが可愛いとも思うので注意したりはしない。
子供のように風船を見上げながらも、きっとこの人はあの風船が天まで届くとは思ってないだろう。
途中で萎んで地べたに落っこちて街角のゴミの一つと化すのを知っているだろう。
それでも、あっという間に赤い点になってしまったそれを物欲しそうに見上げる姿は何処か赤也をむっとさせた。
「乾さん」
ぐいっと袖を引っ張って彼の意識をこちらに戻す。
「あ、ごめん、行こうか」
「っす」
再び歩き出して、赤也は乾の手を繋いだ。
乾はちょっと驚いたように見下ろしてくる。
「あんた、すぐふらふらするから」
そうかなあ、と微笑う乾に、そうっすよ、と赤也も笑った。