金網一枚隔てた向こう側。
立海のレギュラー陣が各々コートに散って練習をしている。
乾は視線をコートに固定したままペンをノートの上で躍らせる。
どうせ後で書き直すのだ。自分が分かればそれでいい。
視線の先で、黒い帽子を被った青年がこちらを見た。
あ、見つかった。
すとんとその場に縫い付けられたような威圧感に乾は悟る。
そのまま数秒、お互いに動かない。見詰め合ったまま。
動いたのは向こうだった。
ふいっと何も無かったように視線を逸らしてまたラケットを構えた。
何も変わらない。
所詮こちら側とあちら側。
境界線は、越えられないのだ。
きっともう、彼は二度とこちらを見ないだろう。
乾はそう思いながら、それでもペンを繰るのを止めなかった。