さわさわと頬を風が撫でていく。
それに導かれるように乾を見れば、思ったとおり彼は呆けていた。
風に呼ばれる、とでも言うのだろうか。
乾は時折、こうして風の行く先をぼんやりと見つめている。
その視線の先に何が映っているかなんて、分かりきっている。
関東大会の決勝でケリをつけたはずなのに、それでもその影を追い続けている。
俺が、隣にいるのに。
「……」
落ち込みだした気分を苛立ちに変えて、日吉は衝動のままにその無駄に長い足を蹴っ飛ばした。
「いたっ」
びくっと飛び跳ねんばかりの反応で振り返るその顔は、何故自分が蹴られたのか分かってないようだった。
「ど、どうしたの、日吉」
「バカみたいに口開いて突っ立ってるからですよ」
「それだけ?!」
「ああ、あとはこんな所で突っ立ってると他の歩行者の邪魔です。さっさと行きますよ」
「?うん?」
訳が分からないまま、それでも乾はとっとと歩き出した日吉の後に続く。
この人はアホだ、と日吉は思う。
頭はいいが、アホだ。
データなら一度聞いただけで覚えるのに、それ以外となると何度言ってもすぐに忘れてしまう。
きっとまた風が吹けばこの人は立ち止まるのだろう。
そしてその風の行く先にあの人の影を見るのだろう。
この人は四年余りの間、そうやって過してきたのだ。
自分は未だ、そこに割り込めないでいる。
「……下克上してやる」
「え?何、何か言った?」
「何でもありません」
風なんて、吹かなければいいのに。
日吉は小さく舌打ちを零し、追いついてきた乾の手を些か乱暴に握った。
「迷子にならないでくださいよ?」
抗議の声は無視する事にした。
***
風つながりということで、「風の行方」を意識してみました。(笑)
多分このぴよいぬは手すらろくに繋げてないと思われ。