さて、連日世間を賑わせている東芝を見て、「監査法人の責任が」「いや、何を言ってるんだ」と、調査報告書でもその点については踏み込まれておらず、それはどういう事なんだと意見が分かれているところですが、思うところを書いてみたいと思います。
私も数字をまとめる仕事を、全て新興や、新興上がりの会社ですが、クソ株、CF潤沢高成長ネット系、再建から復活系、安定成長系、この4パターンで担当していました。
経理では適正な会計基準で数字をまとめるのはもちろん、業績を期待する投資家とも向き合うわけですから、事前に公表した業績予想は意識しますし、合法の範囲内で会計処理、決算処理を「工夫して」、理論武装して監査に向かいます。これは同じ仕事されてる方は皆さん同様かと思います。
ここからは営業外の項目が多い会社、BSに減損対象になりかねない資産を多く持つ会社での話になりますが、会計処理も全てがそのまま通るはずもないのは出す側も理解しており、
①まず通らないと思われるが出してみる
②交渉すれば通るorどこかで着地点が見つかるだろう
③これはまず通るだろう
会計処理、決算処理もこの三分類ぐらいに分けて準備していました
一方、監査法人の対応も、法人や担当者により大きく分かれてきます。
私も大手からクソ株専用監査法人までいろいろ会計監査を受けてきました。
①根拠を付けて否定され、監査六法など見ずに空で条文と正しい処理まで返され、おまけに税務処理までアドバイスされてしまう例
②担当会計士が「上司と交渉します」「主査に聞いてみます」で持ち帰り、「やっぱり駄目です」となるものの、本人が論拠薄弱なので交渉して押し込むパターン
③全てスルーのクソ監査
に分かれる印象です。損益やBSの状況でも対応は分かれますが、準備したにも関わらず①に近い対応をされた事は一度しかないです。あやしげなスキームを組んで資産の整理や組織再編を行う場合は、決算期以外でも事前に相談しておき、否認されないようにしておくのはもちろんですね。
東芝の粉飾手法を見ていますと、後で一処理加えたら合法になるものも多くありましたが、気になったのが、先ほど上げた③全てスルーのクソ監査、で通してしまった件がいくつかあったな、という点でした。
おそらく、重要性基準以下だったり、監査スケジュールの都合だったり、または経理が非協力的だったなどの理由も考えられます。
例の監査法人も、一時期、人を増やしすぎたところに不景気と重なり倒産や上場廃止が相次ぎ、猛烈なリストラを行うなど、収益に苦しんだ事がありますので、最小限の工数で進めていたのか、などとも思います。
監査法人の事情、経理の協力体制など事情はいろいろあるでしょうが、一般的には、監査人に隙が無ければ、騙そうなどという気持ちはまず起こらないものです。
カネボウもそうでしたが(前身の中央青山。東京事務所では中央青山、みすずからの残留メンバーもかなり多い)、甘い対応で損益が厳しいクライアントを繋ぎ止めても、結局クライアントを失い、評判も落としてしまうわけですから、監査法人の上の方はわかって頂けたらなあと思いますね。わかってるのかもしれませんが、何度も繰り返しているわけですからね。
さて、どうなるでしょうか。引き続き注目していきたいと思います。