内閣府は21日、生成AI(人工知能)と知的財産権保護のあり方を議論する「AI時代の知的財産権検討会」をオンラインで開き、中間とりまとめの骨子案を提示した。著作権以外の知財権についてAIに学習させる段階は原則、権利侵害は発生しないと確認した。検討会は2023年10月に始まり計6回目となる。これまでの議論や業界団体と各省庁からのヒアリングをもとに骨子案をまとめた。4月にも中間とりまとめを策定し、6月ごろ公表する政府の知的財産推進計画に反映する予定だ。生成AIサービスと著作権以外の意匠権、商標権、不正競争防止法などの知財権との関係を整理した。AIによる学習段階は原則として規制の対象外だと考えられると一致した。AIに関する技術開発の保護に軸足を置いている。AIの利用や生成物ができる段階では、知財権の権利侵害に当たるかどうかを判断する。生成物がデザインやロゴといった知財権をもつ創作物などと似ているかどうかが判断基準の一つになる考えを示した。著作権は文化庁の小委員会が2月、AIによる文章や画像などの無断利用が著作権侵害に当たる場合もあるとした考え方を取りまとめており、その議論も念頭に置いた。骨子案は技術による対応策を記した。生成AI製の創作物かどうかを利用者が識別できるようにする「電子透かし」のような方法を挙げている。ネット上の情報発信者を明示する「オリジネータープロファイル(OP)」は、コンテンツの出所や加工情報などの来歴管理に有用だとした。自動収集システムを使って有料コンテンツを集められなくするような技術についても説明した。21日の会合では知的財産権の視点からのAIガバナンスについて討議した。AIサービスの事業者、権利者、ユーザーがそれぞれ安心してAIを活用できるようにするために必要な取り組みを示した。ユーザーがAIサービスを利用する際、利用規約などを通じて知的財産に配慮されているかを確認する仕組みなどを巡り意見を交わした。過去の検討会では創作物の作者への利益還元のあり方も議題になった。権利者が学習用のデータを整備したり、クリエーターが自らの作品をもとに生成AIを開発して有償で提供したりすることなどを例示した。日本音楽著作権協会(JASRAC)はAIの学習に利用した著作物の情報を記録し開示することで透明性を確保するよう求めた。