岸田文雄首相は18日、自らが会長を務めていた自民党岸田派(宏池政策研究会)の解散を検討する意向を表明した。東京地検特捜部が同派の元会計責任者を立件する方針であることを踏まえた。政治資金問題で強まる党への不信を払拭する狙いだ。最大派閥の安倍派(清和政策研究会)の解散論も広がる。首相は首相官邸で記者団に「宏池会の解散を検討している。政治の信頼回復に資するなら考えなければならない」と述べた。これに先立って派閥の幹部らと会談し解散の同意を取り付けた。政治資金規正法上の政治団体を解散する案がある。政治団体がなくなれば政治資金パーティーなどの開催が困難になるため「派閥とカネの関係を絶つ」と国民に説明しやすくなる。岸田派はおよそ3000万円のパーティー収入などを政治資金収支報告書に記載しなかったことが特捜部の調べで明らかになっている。首相は2023年12月に岸田派を離脱するまで会長を務めており、野党からは首相の辞任を求める声があがっていた。首相は18日、岸田派の不記載について「事務的なミスの積み重ねとの報告を受けている」と説明した。「在任中から今日までそれ以上のことは承知していない」と自身とは無関係だったと強調した。安倍派幹部の一人は「首相が岸田派解散を言った以上、安倍派も同じ流れになる。早々に結論を出さないといけない」と語った。安倍派は19日に議員総会を開く。18日には福田達夫元総務会長ら有志の議員が党本部で会合を開いた。塩谷立座長ら幹部に派閥の政治資金問題の経緯について説明を求める意見や、同派を解体すべきとの主張が出た。出席者の一人は「幹部がけじめをつけるべきだ」と話した。首相は政治改革を議論する政治刷新本部の本部長を務めており、来週にも中間案をまとめる。党内には派閥の存続を重視する意見もあり、岸田派の解散は党内からの反発を呼ぶ可能性もある。岸田派(宏池会) 池田勇人元首相が1957年に創設した。「軽武装、経済重視」を掲げた吉田茂元首相の流れをくみ、保守本流を自任する。これまでに池田氏、大平正芳氏、鈴木善幸氏、宮沢喜一氏、岸田文雄首相の計5人の首相を輩出した。岸田首相は2023年12月に派閥を離脱するまでのおよそ11年間、会長を務めた。林芳正官房長官、上川陽子外相ら46人が現在所属する。旧大蔵省(現財務省)をはじめ官僚出身者が多い。政策重視の一方で権力闘争に弱い「お公家集団」と指摘されることもある。宏池会の会長だった加藤紘一元幹事長が2000年に当時の森喜朗首相に退陣を迫った「加藤の乱」は失敗した。その後の分裂などに伴い弱体化した。