国家公務員の人事制度を協議する人事院の「人事行政諮問会議」は9日、中間報告を川本裕子総裁に手渡した。人材確保のため職務内容で報酬を定める「ジョブ型」を拡大する案を提起した。年功序列型の硬直的な制度を改め、専門能力を持つ民間人材の中途採用などを進めやすくする。職務内容で報酬を定める制度は現在、任期付きの民間人材の登用などに限って採用できる。今回の中間報告は無期雇用を含めて様々な分野に順次広げる方向性を打ち出した。まずは人材獲得の必要性が高い分野などで導入することが念頭にある。今回の改革案には外部人材の登用や若手の離職防止という狙いがある。報告は若年層に訴求する改革の必要性を指摘し「市場価値に見合った競争力のある適切な報酬額にすることも重要」と訴えた。デジタル分野など民間から人材を呼び込むには職務に妥当な待遇が欠かせない。既存の等級にあてはめた従来の人事制度のもとでは個別の職務内容に則した報酬を柔軟に設定しにくい。若手をより複雑な職務を担える仕事に登用できるようにし、能力のある人材の離職を防ぐ意図もある。人事院の調査によると、中央省庁で働く在職10年未満の総合職職員の退職者数は2020年度に109人となり、13年度の76人から43.4%増えた。人事院の調査で23年度に採用した国家公務員の81.1%が公務員の仕事の魅力向上策として「給与水準の引き上げ」を挙げた。23.6%が「年次に関わらない柔軟な処遇の徹底」と回答した。民間企業はジョブ型の拡大が進む。パーソル総合研究所の21年の調査で57.6%の企業がジョブ型を導入済か検討中だった。職務内容で柔軟に処遇できる民間企業との待遇差が広がれば専門人材などの確保が難しくなるとの危機感が人事院にはある。政府は1947年に現在のジョブ型に類する「職階制」の導入を検討した過去がある。この当時も組織風土との摩擦などを理由に実現しなかった過去がある。長年続いた文化を変えるのは容易でない側面もある。諮問会議は冬までに早期に適用する職種の選定や報酬体系の詳細な設計といった具体的な方策を議論する。国家公務員に求められる行動を明文化した「行動規範」の導入や希望する職種への公募制の拡充もあわせて検討する。方向性が早期に固まった要素については例年8月に国会と内閣に提出する人事院勧告に盛り込む可能性もある。