10日の外国為替市場で円が対ドルで下落し、一時1ドル=152円台後半を付けた。1990年6月以来およそ34年ぶりの円安ドル高水準。10日に米労働省が発表した3月の消費者物価指数(CPI)の上昇率が市場予想を上回り、米連邦準備理事会(FRB)が早期に利下げに動くのは難しいとの観測が強まった。日銀が3月にマイナス金利政策を解除した後も低金利政策を続けるとの見方が強く、日米の金利差が開いた状況が続くとの見方が円安・ドル高につながっている。マイナス金利の解除後も日銀が大規模な国債買い入れを続けていることも、円安要因として意識されている。3月のCPIは、市場が年央の利下げ開始というシナリオを維持できるかどうかの試金石との位置づけだった。米金利先物の値動きから米国の金融政策を予想する「フェドウオッチ」によると、6月11〜12日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBが利下げに踏み切るとの見方はCPIの公表後に一時2割程度となった。9日には5割を超えており、急速に利下げ観測が後退している。大和証券の多田出健太チーフ為替ストラテジストは「これまで市場は24年に3回の利下げを予想してきたが、場合によっては1回にとどまることもあり得ると思わせる結果だった」と指摘する。利下げ観測の後退を受けて米国債の利回りは上昇(債券価格は下落)した。米長期金利の指標となる10年物国債利回りが一時2023年11月以来となる4.5%台に上昇した。152円台では政府日銀が円買い為替介入に動くとの警戒感も強く、下値では円の押し目買いも目立った。鈴木俊一財務相は9日の記者会見で「いきすぎた動きにはあらゆる手段を排除せず適切な対応をとる」と円安進行をけん制している。