米連邦準備理事会(FRB)が2024年内の「しかるべきときに」利下げに踏み切ることはパウエル議長も認めている。前回(23年12月)時点の米連邦公開市場委員会(FOMC)参加者の政策金利見通し(ドットチャート)では、24年に利下げ3回が中心値であった。しかし、市場は期待も込めて6回前後と読んでいた。ところが、その後、米国経済の堅調さを示す経済指標が相次ぎ、市場の予測も3回となり、更に、1月と2月の2カ月連続で米インフレ指標が上振れしたことで、2回説も有力となった。仮に2回となれば、開始時期も年後半となり、かなりの金融緩和後退と受け止められる。それゆえ、今回のFOMCについて最大の注目点が、年内利下げ2回か3回か、に絞られたわけだ。日本の視点では円安がいつまで続くのか、という疑問を解く一つの手掛かりともなりうることだ。結果は、中心値が3回。しかし、僅差である。たしかに前回に比べ、3回と記したFOMC参加者が6人から9人に増えて、中心値ともなった。とはいえ、2回説は今回も前回も5人と変わらない。一方、4回説は4人から1人に減っている。1回説も1人から2人に増えている。総じてFOMC参加者19人のうちで、3人が4回組から3回組に移った印象を受けるが、2回組も存在感がある。まだ3回と決めつけることはできない。仮に利下げ開始が6月とすれば、まだ3回の雇用統計や消費者物価上昇率が待ち受ける。市場の見方も6回が2回に振れるほど振れが大きいので、筆者はドットチャートを瞬間風速程度に受けとめている。なお、量的引き締め(QT)も「かなり早い時期に」見直すとされた。この件については、記者会見でも3人連続で質問が出るほど、市場の関心事となっている。QTを今後も予定通り続けると、短期金融市場の流動性が激減して波乱が生じた前例が市場には鮮明な記憶として残っている。おりから、米地銀が経営不安に陥ったことで、弱小銀行不安にはFRBも市場も神経質にならざるを得ない。20日の記者会見で、パウエル議長はQTでどの程度までFRBの資産規模を減らすのか問われ、必要十分(ample)だが、豊富(abundant)とはいえない量と、苦しい答えで応じていた。そもそもQTで過剰流動性を回収すると、いみじくもバフェット氏が語ったごとく、「誰が裸で泳いでいたか分かる」。最新の事例では、仮想通貨の急激な価格変動。そしてエヌビディアの株価急騰。バブルか否か議論がヒートアップしているが、FRBの視点では「市場の緩み」の事例とも映り、利下げ見送りともなりかねない。ニューヨーク市場の最前線では、利下げが2回か3回か、ということより、QTに関する議論のほうが「怖い」との現場の本音も語られる。利下げもQTも、今後のFRB高官発言などに振り回される場面が増えそうだ。