自民党派閥の裏金問題は、現職国会議員の逮捕者を出すに至った。国民の政治不信は極めて深刻である。全容を徹底解明するとともに、派閥のあり方を含め、政治資金をめぐる諸制度の実効性ある見直しが欠かせない。東京地検特捜部は7日、安倍派(清和政策研究会)所属の池田佳隆衆院議員を政治資金規正法違反(虚偽記入)容疑で逮捕した。会計責任者だった政策秘書も同容疑で逮捕した。2022年までの5年間の政治資金収支報告書に、派閥から還流を受けたパーティー収入計約4800万円を記載しなかった疑いがあるという。池田議員は安倍派議員の中でも不記載の金額が大きいとされてきた。特捜部は23年末に議員事務所などを家宅捜索し、押収物を調べてきた。一連の裏金問題で逮捕者が出るのは初めてだ。「政治とカネ」への国民の不信がさらに高まるのは避けられまい。こうした事態を招いた派閥の責任は非常に重い。特捜部は安倍派を中心に、政権中枢メンバーを含む多くの議員に対して聴取を行ってきた。裏金を還流させる仕組みができたのはなぜなのか。中心になっていたのは誰か。裏金の使途は。まだ明らかになっていない疑問が山積している。受け取った側にとどまらず、還流を主導した派閥側の責任も厳しく問われる必要があろう。特捜部は引き続き、全容の解明を進めてほしい。捜査の中で具体的な容疑が明らかになれば、ためらわずにさらなる摘発に乗り出すべきである。自民党は池田議員の除名処分を決めた。だがトカゲの尻尾切りのように、排除して済ませるといった対応なら問題だ。「捜査中」を理由に具体的説明を避け続けるのも筋が通らない。国民に対する説明責任をもっと果たすべきだ。岸田文雄首相は年頭記者会見で、政治資金問題を検討するために党総裁直属の「政治刷新本部」を新設すると表明した。首相は7日、池田議員の逮捕を受けて「信頼回復のための具体的方策は実効性のあるものにしなければならない。政治刷新本部で議論を深めていきたい」と述べた。首相のいう通り、肝心なのは実効性である。制度改正といいつつ抜け道が残るような小手先の見直しはもはや許されまい。政治不信の根を絶つだけの改革が求められている。