爪を刺すその喉笛

泣顔頂戴

一番近くに在る星

累々を看取る

闇を摘んで

四肢祀り

昏睡の成れ

祟る祟る、哀の引導

色情の餌

画廊より一人

血の岸

愚生者の根

遥か遠くのさよなら




【泣顔頂戴】


まるで乳飲み児

ぢゃあぢゃあと

剥製にしてあげよう

完成されたその顔


サイフォンから香る

ごぽごぽと

愛容れない通信異常

床にぶち撒けちゃって


気にしないで言えば

役に立たない

その笑顔が要らない




【一番近くにある星】


心臓が止まる

自分でえぐった

綺麗だから眺めて

流れているものも

投げ出して出ていこう

昨日まで さっきまで

繋いでいたのに


夜は降りてきませんよ

いつだってそこに有ります

私はずっと待っていて

お慕いしております

形が無くてもいいでしょう

誰でもいいから

同じ色にして

嫌かな

だめと

言わないでね


心の向かう方へ

大切なあなた大切に

あなたがくれた

世界を包むこの気持ちを

いつまでも

忘れない 忘れないで

おやすみなさい

ずっと


明かりは

消しましたよ




【累々を看取る】


繰り返す心肺蘇生

神の子ならではの芸だ

万人を愛の骸として言い包め殺して参ります

座興よアンチテーゼよ

機智ある方へ智の鳴る方へ

高らかに 嗚呼 高らかに

啓示のままにふた目と見られぬことを成し遂げましょう

蠱惑と蠱惑が手を繋いで聖なる火を灯した

皆が物言わぬ命を抱き 空の祈り

私だけは救われませんように

より早い順になりますように

撫でる 縊る

そっと溝水に浸す

どうぞ 召しませ

ああああああああああ明日という煌めかざる永遠




【闇を摘んで】


健やかに 健やかであればと

人と成れ 倦んだ者たちの劇場

髪を落とし 声を窄め

櫛を持って往きなさい

背中越しの袖引き

一つ摘んでは

夜の畔

風を吸って

誰も見えなくしては


朱に黒に哀しみを出涸らし

惰性と委ねる 灰を求める激情

遠くおらび 襲い来る静けさ


裏参道 破れの廟

来つ寝 酔ってきて

夢し鳴 獲っておき

宙ぶらりして遊ぼうよ


濤声 童の群れ

一つ積んでは

父の骨 母の骨




【四肢祀り】


貪婪の徒が

仰ぐ

天より垂れる黒髪

愛と憎とを

呟く亀裂

しかと見よ

頰撫でる

絡み舞う四肢

美しく

息が漏れる

断面

ずっと

ついて来る鳴き声

祀られながら

愛と憎とを

誦える屍

掬えぬ

あふれた夜

烈々と

見境の無い

道連

あなたの最奥まで

入って来る

這い這い

ばいばい




【画廊より一人】


私の息を夜が見つめてる

やめてほしい

廃されて終端まで孤独を運ぶ線路が

続いてるよ

やがてバイオリンの奏でる

これからの日

空には昏黒の君の顔が或るだけ

コンクリイト塗れの風景画

胸を開いて想いを露わにする

全部並べて

画布に釘付け

ありったけの愛を

錆びた愛を




【愚生者の根】


祈りを植えて礼讃を浴びせれば

そこに聖者が生えてくる

毎日水をくれてやろう

権威の残骸 聳える塔に

小鳥と戯る囚われの君


月の欠片の眠る荒野に

脱獄の獅子遠く吼え

かつて栄華の都には

亡びし業の 群れ群れ群れ

眠れよ眠れ 月の光


顔を失くした薄ら笑いの賢者たち

色とりどりの宝石を指に

死装束を翻し踊る

戦乙女は先導する

迷いの森の開けぬ先に


どうかしてる哀れな道化師

人々の拍手でもって 天井桟敷の綱渡り

嗤えよ笑え 天晴れだ

僅かばかりの銅貨をあなた

お恵み下さいどうか私に