たとえば君に好きが言えたとして次の日には僕がいなくても世界は回り続けるだろう
たとえば手を離して別れをつげた二人が消え去っても世界は何も変わらない
たとえば嵐がやって来て過ぎ去って新芽が芽ぶいても重機械に掘り起こされる
たとえば一人の老婆が語り伝える昔話は少女の心のヒトコマに引っ掛かるだろうか

 

寂しい報告を知りながら待ち続ける過酷
一握の笑顔を絶やすまいと通う涙の裏側

 

たとえば費やした時間と手に入れた幸せが釣り合わなかったとして
たとえばわずかな生命の躍動に耳を貸す創造主が不在だったとして
たとえば隣にいる君に僕の手は冷めきった飲み物しか差し出せなくても
たとえば明日も僕は行ってきますと手を振るのだとしても

 

喜びの知らせを聞くまでの心の隙間
おかえりの言葉をかけるまでの空色

 

たとえば降りかかるような星の瞬きと取り替えのきかない神の悪戯