弁護士 平松 剛 の 「労働問題日記」
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残業代について①

弁護士の平松です。

先日は、労働事件の中でもっとも数が多いと思われる「解雇」についてお話ししました。

今回は、その次に多いと思われる


残業代


についてお話ししたいと思います。


残業代の裁判でいちばん重要なのは、勤務時間についての証拠の有無です。

タイムカードや勤怠システムのプリントアウトがあればそれに越したことはありませんが、この点は、皆さんも認識されていることなので、詳細は後日お話しします。



このように裁判にする以前に、重要なこととしては、


どのような人が残業代を多く請求できるか


であります。


これについて、お話ししたいと思います。


ここでいう残業代とは、正確に説明するとかなり長くなってしまうのですが、平たく説明しますと、


週40時間を超えて働いた場合に、その超えた部分の対価として支払われる、通常の場合よりも割増された賃金


であります。

これが未払いの場合に、いわゆる「残業代」として会社に対して請求でき、その額が多ければ、弁護士費用を支払ってでも回収する価値はあるといえるでしょう。


それでは、どのような場合が、多くの残業代を請求できるでしょうか。

まずは、


①時給制の人より月給制(あるいは年俸制)の人の方が、残業代は多くなる



といえます。

なぜなら、時給制の人は、時間単位で給料が支給されているため、40時間を超えた部分についても、割増されてはいないものの通常の場合の賃金は支給されていることが多いのですが、月給制の人は、月単位の固定額で支給されているため、たいていの場合、40時間を超えた部分については、通常の場合の賃金さえ支給されていないからです。

つまり、月給制の人は、40時間を超えた部分についてはまるまる未払いとして残業代を請求できるが、時給制の人は、40時間を超えた部分についても一部分しか未払いとなっておらず、残業代の額は低くなる、といことになることが多いのです。


次に、


②週6日勤務の人の残業代は、週5日勤務の人に比べ、はるかに高額になる


といえます。

なぜなら、1日8時間勤務の人が多いと思われますが、そうしますと5日間働いただけで40時間勤務したことになるので、6日目の勤務は、その部分がまるまる残業代として、会社に対して請求できるからです。


以上の①②の条件が当てはまる方として、よく挙げられるのは、



ア)飲食店に勤務されている方



もしくは、


イ)美容師・理容師の方



であります。


これらの方は、証拠さえあれば、2年以上勤務されていれば、


200万円以上


の残業代が請求できると思われます。



まだ在職中の場合には、なかなか請求できる気分にはなれないかもしれませんが、もしお辞めになる意思があるのでしたら、残業代を請求しない手はありません。

なので、そのような方は、是非、当事務所にご連絡ください。



とりあえず、残業代についての最初のお話は以上であります。


次回は、


セクハラ


についてお話ししたいと思います。

解雇について①

弁護士の平松です。


さて、昨年のリーマンショック以来、雇用情勢が悪化していることは皆さんもご存じでしょうが、それに加えて現在の情報化社会、さらに権利意識の向上等の事情があって、東京地裁における労働審判の事件数は、


昨年の倍以上


と謂われています。

その労働審判の事件の中でも最も数が多いのが、地位確認事件、すなわち、


解雇の問題



であります。


今日は、その解雇のポイントについて、お話ししたいと思います。


その解雇のポイントを簡単に言うと、


①解雇はほとんどの場合は無効となるが、②法律上の「解雇」といえるかは厳しく認定される


ということにつきます。


まず①について、日本では伝統的に終身雇用が前提とされてきたこともあり、会社が社員を解雇しようとする場合には、その前に解雇を回避する努力をする義務がある、というふうに、裁判所は考えてきました。

しかも、この解雇回避努力を尽くしたかどうかについては厳しく認定され、解雇が最後の手段といえるものではないかぎり、


解雇権の濫用にあたる


として、解雇は無効とされるのです。

このことは、本やネット上でもいろいろ述べられていることなので、ご存じの方も多いと思います。


問題は②です。

このように、解雇は社員の地位を奪うにもかかわらず、法律的にはたいていは無効と判断されるので、そのことがあったかなかったは会社にとっても社員にとっても極めて重要なことです。

なので、裁判官も、そのことの認定について極めて慎重になりますので、簡単に「それは解雇だ」とはいわないのです。

すなわち、裁判官は、


「辞めろ」と言うこと=解雇


とは考えていないのです。


また、裁判官は証拠に基づいて認定し、それも書面による証拠が中心となるので、たとえ「あなたは今日付けで解雇です」と言われたとしても、それを証明する書面の証拠がないと、なかなか「解雇の意思表示があった」と認定してくれません。

このように解雇の意思表示を認定してもらえないと、社員が勝手に会社に行かなくなったとのことで、原則として会社に対してお金を請求することができなくなってしまうのです。

そうすると、解雇の意思表示があったといえる証拠として、何を用意すればよいのか、ということになりますが、ぞれはズバリ、会社が発行する



解雇通知書

解雇理由証明書


といった書面になります。

逆に、これがありませんと、「辞めろ!」という社長の声を録音したテープがあったとしても、解雇の意思表示があったと認められない可能性が高くなってしまうのです。

なので、皆さんも、もし「解雇だ!」と言われましたら、「解雇通知書」「解雇理由証明書」と言った書面を会社に発行させるようにしてください。


ただ、いきなり「解雇理由証明書を…」などといいますと、「コイツ、訴える気じゃないか…」と警戒されてしまうので、とりあえずは猫をかぶったフリでもして、


「解雇なら仕方ないですね…。

ただ、ハッキリさせいたいので、そのことを書面にしてくませんか?」


などと言ってみるのが良いでしょう。


ちなみに、この「解雇理由証明書」を会社が発行しなければならないことは、労働基準法第22条第1項に規定されています。


解雇の最大のポイントは以上の点にありますが、他にもいろいろありますので、それは後日お話ししたいと思います。



弁護士 平松 剛

弁護士のブログ、はじめました

はじめまして、弁護士の平松です。


ブログ、はじめました。


これまで、労働問題を専門にする弁護士として、かなりの事件をこなしてきました。


労働問題は誰にでも付きまとう極めて身近な問題ですが、本やインターネットでも、その実態がなかなか明らかにされていません。


そこで、現実にどういう問題が起こっていて、どういう解決がされているのか、みなさんに知ってほしいと思い、ブログをはじめました。


なお、私の事務所のHPは、http://www.hiramatsu-go-law.com となっていますので、そちらも合わせてご覧ください。


100年に一度という不況の中、労働問題にお悩みの方はたくさんいると思うので、そういう人のお力になれたら幸いです。