まず明らかにすべき「二つの所属」
県が採用するのであれば、雇用上、その医師は県職員として扱われると考えるのが自然である。給与、勤務条件、服務、異動命令など、雇用主としての権限と責任は県にあるだろう。
一方、専門研修は別の仕組みで動く。
若手医師が内科、外科、整形外科、産婦人科などの専門医を目指す場合、認定された専門研修プログラムに所属し、基幹施設や連携施設を回りながら、必要な症例と指導を受ける必要がある。宮崎大学の専門研修プログラムに所属するのであれば、研修内容やローテーションには大学側のプログラム責任者も関与する。
つまり、制度によっては、
- 雇用・給与・服務上の所属は宮崎県
- 専門研修上の所属は宮崎大学などの研修プログラム
という「二つの所属」が生じる。
これは直ちに矛盾するものではない。しかし、派遣先を県が一方的に決め、その勤務が専門研修上の必要症例や指導体制と合わなければ、若手医師の専門医取得が遅れるおそれがある。反対に、大学の研修計画だけを優先すれば、県が必要とする地域へ機動的に派遣するという制度の目的が弱くなる。
したがって重要なのは、「県と大学のどちらが人事権を持つか」という二者択一ではない。雇用上の配置権と、専門研修上のローテーション決定権を、どのように接続するかである。
派遣先は誰が、何を基準に決めるのか
県が採用した医師の派遣先を最終的に決めるのは、基本的には県になると考えられる。しかし、若手医師の配置は、単なる欠員補充として決めるべきではない。
少なくとも、次の条件を同時に確認する必要がある。
- 地域の医療需要と医師不足の程度
- 医師本人が希望する専門分野
- 専門研修で必要となる症例数と診療内容
- 派遣先における指導医の有無
- 当直や救急を含む勤務負担
- 緊急時に相談・搬送できる後方支援体制
- 家族事情や住居、通勤などの生活条件
この調整を誰が行い、意見が一致しない場合に誰が最終判断をするのか。その手順を事前に明文化しておく必要がある。
県、県立病院、宮崎大学、専門研修プログラム、派遣先病院、医師本人が参加する配置調整会議を設け、派遣前に研修価値と安全性を確認する仕組みが望ましい。異動の決定理由を本人に説明し、不服や再調整を申し出られる手続きも必要だろう。
「派遣先に指導医がいるか」は核心的な問題
若手医師を医師不足地域へ送れば、それだけで地域医療が強化されるわけではない。
むしろ医師が少ない病院ほど、日常的に相談できる上級医や同じ診療科の専門医が不足している可能性がある。経験の浅い医師が、十分な支援なしに救急や入院診療を担えば、本人の負担だけでなく、患者安全にも関わる。
必要なのは、指導医が「名簿上いる」ことではない。実際に相談できる体制である。
- 日中に直接相談できる指導医
- 夜間・休日のオンコール支援
- 県立病院や大学病院との遠隔相談
- 必要時に患者を速やかに転送できる仕組み
- 若手医師自身が疲弊した際の交代・退避ルール
- 定期的な面談と研修到達度の評価
こうした条件を派遣先ごとに公開し、条件を満たさない施設には単独で若手医師を配置しないという安全基準も検討すべきである。
























