予定があったので福間の海岸沿いを車で走った。
するとノスタルジーが胸を覆い始め、やがて締め付け始めた。
いつしか車内で音楽は聴かなくなったのだが、今日はあの頃カセットテープで聴いていた曲をストリーミングで聴いている。

学生時代、初夏の晴れた日には良くドライブに出かけた。
「天気も良いし、どっか行かない?」
近所に友達は沢山いたし、電話をすれば誰か捕まった。
車の中では恋の話で盛り上がった。
社会へ出ることへの漠然とした不安もあったが、それを上回る希望も確かに持ち合わせていた。

夏が大好きだった。だから初夏は恋人に会いに行くような気分でワクワクしていた。
だからこの頃の海が大好きだった。
まだ誰もいない海。波のきらめきや心地よい風。夏休み前に「また会えたね」と挨拶をしてる気持ちになった。

思考を現在に戻す。
突然の誘いに付き合ってくれる友達はいるだろうか?
あてのないドライブに付き合ってくれる友達はいるだろうか?
あの頃の友達はどうしてるだろうか?

空っぽのはずの助手席に誰かの姿を探す自分に、もう一人の自分が時はあまりにも流れてしまったことを説いている。

あんなに好きだった夏も、近年実は暑さを疎ましく感じ始めている。
僕もあの頃のままではない。

時々不意に訪れる青春の記憶を見送る時にはいつも胸が締め付けられる。
「青春シンドローム」とでも呼ぼうか、この症状と



うまく付き合えるようになった時、「大人になった」と言えるのかもしれない。


「は?大人になった??何を今さら」
ほうれい線が刻まれた口元から苦笑いが漏れた。