"無限列車"ブームが収まりつつある今日この頃。
それに勝るとも劣らない熱狂的な支持を掻き集めているアニメ映画がある。
そう、"シンエヴァ"こと『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』だ。
自分は25年前のTVアニメから追っかけているわけではなく、エヴァに出会ったのもおよそ1年前と新参者だ。
しかし庵野監督の世界観と繊細な心理描写からくるキャラクターの魅力(特にアスカ)に心をわし摑みにされ、たちまちエヴァの虜になった。
このエヴァというコンテンツは1995年から半年に渡って放送されたTVアニメ版を皮切りに、アニメ版の総集編であり最終回を描いた旧劇場版、2007年から4部作として製作された新劇場版、キャラデザを担当した貞本義行氏のコミック版などシリーズが多岐に渡っている。
今回のシン・エヴァンゲリオンはそのすべてに決着をつける完結編であり、長い間エヴァを追い続けてきたファンにとっては涙なしには見られない最高傑作だ。
自分も一昨日、ついに映画館で鑑賞することができたのだが、2日が経った今でも余韻が抜け切らないほどの名作だった。
ネタバレ全開で感想を書きなぐりたいところだが、それはまた別の機会に。
というわけで、今回は"巷で話題になっているシンエヴァなるものを見てみたい!"と思ってはいるが、シリーズが多すぎてどれをどんな順番で履修すればいいのかわからない…というエヴァ初心者の人に向けて、"シンエヴァを最大限に楽しむために履修しておくべきものとその順番"を自分なりに紹介していきたいと思う。
たかが映画1本にめんどくせえ。
そう思うことなかれ。
アベンジャーズ"エンドゲーム"で泣くためにはMARVEL全シリーズと原作コミックの知識が必要なように、シンエヴァで感動し心揺さぶられるためにはまずあらゆるエヴァを知らなくてはならないのだ。
※以降、シンエヴァの核心に触れるようなネタバレはないので安心してお読みください。
①ヱヴァンゲリヲン新劇場版 : 序・破 (視聴時間:約2時間30分)
シンエヴァは新劇場版4部作の4作目。
やはりそのシリーズから見ていくのが順当だろう。
NetflixやAmazon primeなど、ほとんどの有料動画配信サービスで配信されているので簡単に見ることができる。
ただし、ここで見るのは1作目の"序"と2作目の"破"のみ。
理由はあとで説明するが、3作目の"Q"にはここでは手をつけないことをオススメする。
世に出た順番としてはTVアニメ版の方がはるかに前で、そちらから履修するのがスジだという意見もあるだろうが、個人的には新劇場版からの視聴を推したい。
理由としては、
・映画2本で手っ取り早くエヴァの世界観に触れることができる
・TVアニメ版よりもエンターテイメント性が高い
の2点が挙げられる。
この新劇場版はTVアニメ版・旧劇場版のリメイク作品であり、いわゆるパラレルワールドのような位置付け(厳密には違うけど)になっている。
"序"はほとんどTVアニメ版と同様のストーリー展開だから、100分程度でTVアニメ版の1〜6話の内容を理解することができる。
これは普通にありがたい。
"破"はTVアニメ版には登場しないキャラが登場したり、展開が途中から大きく変わっていったりと独自の世界線になっていくが、それでも文句なしに面白い。
TVアニメ版は終盤からとにかく難解で陰鬱な場面が続いていくのに対し、この2作品は徹底してエンタメ路線に振り切った"ファンサービス"的な作りになっているので、初見の人も十分に楽しめるはずだ。
"序"、"破"でエヴァの世界観に触れ、その面白さ、奥深さにのめり込んでほしい。
ちなみに、"破"はめちゃくちゃ良いところで終わるので続きがとても気になるだろうが、ここでは次作にあたる"Q"へ飛ぶのは我慢しよう。
なぜならば、エンタメ路線重視だった新劇場版シリーズもこの"Q"から難解で陰鬱なストーリー展開へシフトチェンジし、とてもじゃないが初見で"面白かった!"と言えるような代物ではなくなっていくからである。
また、いくら破の続きが気になったとしても、その答えはQでは一切提示されない。
Qは破のラストから14年が経過したところから物語が始まり、その空白の14年に何が起こったのかもほとんど解説されない。
自分もシンエヴァを見た今になってようやくQを理解できたし、初めて見たときはかなり困惑した。
というわけで序・破を履修し終わったら、続きが気になる気持ちをグッと堪えて、ひとまず新劇場版シリーズとはお別れしてほしい。
②新世紀エヴァンゲリオン (視聴時間:約10時間)
エヴァの始まりであり、『残酷な天使のテーゼ』で有名なTVアニメ版。
Netflixで配信されている。
26話と非常にボリューミーに感じるかもしれないが、これを観るために費やした10時間を無駄だったと感じることはないだろう。
新劇場版のようなサクサクしたテンポとエンタメ的な盛り上がりには欠けるが、その分、主人公シンジを取り巻く世界観の説明や登場人物たちの心理描写にたっぷりと時間がかけられている。
"セカンドインパクト"や"ゼーレ"、"人類補完計画"といった、新劇場版ではサラッと出てきただけのよくわからない言葉が完璧にとは言わないがわかりやすく説明されている。
もちろん新たな謎や疑問もガンガン生じてくることだろう。
そんなときは、YouTubeの考察動画や考察スレッドを漁ってみることをオススメする。
熱心なファンの中には、下手すると庵野監督以上にエヴァの世界を研究している人だっているかもしれない。
せっかくなので、自分の中で一番わかりやすくまとめられている動画を紹介しておく。
↑おそらく1番再生されてる考察動画↑
さて、アニメ終盤は庵野監督特有の哲学的な表現が増えていき、ストーリーも難解なものになっていく。
しかしそれこそがエヴァの真骨頂であり、やはりこれを通らずにシンエヴァを見たところで本来の半分も楽しめないだろう。
1〜6話は新劇場版"序"とほぼ同じ内容であるため時間がなければ飛ばしても差し障りはないが、それでも細かい設定や登場人物の生い立ちなどでところどころに違いがあるのであまりオススメはしない。
また、25話および26話は製作スケジュールが間に合わなかったのと庵野監督が鬱病を患ってしまった影響でストーリーの進行・伏線の回収が完全に放棄されていて、真面目に見ていてもナンジャコリャな状態になっている。
よって、最後の2話は理解できないどころか始終苦痛に感じるだろうが、できればここも片手間でいいからなんとか見てほしい。
ネタバレになるので詳しくは書けないが、驚いたことにシンエヴァで意外とこの2話の演出が重要なキーポイントになってくるのだ。
ただ、次に紹介する旧劇場版がTVアニメ版の正式な結末とされていて、25話・26話を飛ばしたところで旧エヴァシリーズのストーリーにはなんの影響もない。
よって、あまりに視聴が苦痛である場合や急いでいる場合は、最後の2話については飛ばすのも一つの選択肢だとは思う。
③新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に (視聴時間:約1時間30分)
いわゆる"旧劇場版"と呼ばれる、旧エヴァシリーズの完結編にあたる映画。
Netflixで配信されている。
TVアニメ版ではひっちゃかめっちゃかになってしまった25話・26話を再編集し、ストーリーが伏線とともにしっかりまとまるように作られたはずの作品。
同じく旧劇場版として、"DEATH(TRUE)^2"という映画もあるが、これはTVアニメ版の完全な総集編なので観る必要はない。
詳しくは語らないので、とにかく観てほしい。
シンエヴァを除けば、新旧エヴァシリーズを通して自分が最も好きな作品であり、同時に最も嫌いな作品でもある。
とにかく過激で刺激的な演出や描写、圧倒的なセル作画力、鬼気迫る声優の演技など、どれをとっても一級品で、その衝撃は公開から20年以上経った今でもまったく衰えていない。
庵野監督ならではの難解・陰鬱な展開は相変わらずだが、それすらも一つの芸術として消化されている。
ただし、地上波ではとても放送できないレベルのグロテスクなシーンのオンパレードで、冒頭にはシンジくんのとても主人公とは思えない問題のシーンもあったりする。
苦手は人は十分注意してほしいが、この作品はシンエヴァといわば"左右非対称"な存在で、これを履修しないとシンエヴァの面白さが半減してしまうということは、しっかりと明言しておきたい。
④漫画版・新世紀エヴァンゲリオン
通称、貞本エヴァ。
旧アニメ版でキャラデザを担当した貞本義行氏が描いた、漫画版のエヴァンゲリオン。
漫画版ということでこれがアニメの原作かと思われがちだが、庵野監督が作るアニメ版と同時並行で連載されていた、いわゆる"貞本氏が考えるエヴァ"。
アニメ版との位置付けとしてはパラレルワールドと行った感じだろうか。
ストーリーの大筋は旧アニメ版通りだが、使徒が何体かカットされていたりキャラクターの性格が微妙に違ったりしているほか、結末も旧劇場版よりわかりやすい&爽快なものになっている。
エヴァファンの中でもこの貞本エヴァの結末が一番好きという人は少なくなく、自分もその1人だった。シンエヴァを観るまでは。
シンエヴァと明確に繋がっているわけではなく、ストーリーもほぼアニメ版と同じなので時間がなければ無理に読む必要はない。
(アスカ・カヲル君・加持さん推しは絶対に読むべき)
ただ、最終巻の14巻だけはぜひ読んでおくといい。
というのも、新劇場版の破で登場し、物語の展開を大きく変えたアウトサイダー"真希波・マリ・イラストリアス"の正体について、最後のおまけで言及されているのだ。
⑤ヱヴァンゲリヲン新劇場版 : Q (視聴時間:約1時間30分)
さて、ここまできたらいよいよ新劇場版:Q。
新劇場版シリーズ最大のヒット作にして、最大の問題作。
放映当時は多くの賛否両論を呼んだQを、存分に味わって、存分に混乱しよう。
ここまで来たら多くを語る必要はないと思うが、きっとシンジくんと一緒に叫びたくなることだろう。
"変ですよミサトさん、急にこんなことになってて、わけわかんないですよ!"
そしてごっちゃごちゃになった頭を、シンエヴァを観てスッキリさせてほしい。
⑥よい子のれきしアニメ おおきなカブ(株)
最後に、おまけ程度のものを一つ。
これは庵野監督の奥様、安野モヨコさん作の短編アニメーション作品で、新劇場版シリーズが生まれる過程を昔話形式で紹介している。
新劇場版がどのようにして生まれたのか、問題作"Q"からシンエヴァまでの9年間、庵野監督に何が起こっていたのかがよくわかるようにできている。
この情報を頭に入れた上でシンエヴァを観ると、画面の中で苦悩するシンジくんが庵野監督と重なって見えてきて、よりリアルさを感じることができるだろう。
〜以上。
おつかれさまでした。
ここまで履修したならば、あなたはきっとシンエヴァを100%、余すとこなく楽しめることでしょう。
あとは映画館へ行って、3時間椅子に座るだけ。
Qわけわかんなかったよ、またわけわかんなかったらどうしよう。
自分もそう思っていたけれど、大丈夫。
ちゃんと、すべてのエヴァンゲリオンにさようならできますよ。
では、またこんど!