感想

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前アカはPCの不調と不可抗力により消失しさようなら。記事だけ残りました。

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先日、中学校の同窓会がありました。久しぶりに会う同級生たちと楽しく飲んで、話して、あれ誰だっけ?とか聞いて聞かれて、話して、愚痴って、愚痴られて、飲んで、歌って、笑って、それなりに楽しい一日でした。

その中で、とある友人A君と10年以上ぶりに話す機会に恵まれました。彼とは中学時代とても仲が良かったのですが、特に音楽面での絆が深く、同じミュージシャンに興味を持ち、共にギターを始め、時には共通の友人宅に集いバンドの真似事のようなことをやっていたのです(後にそのたまり場は近隣住民により通報されることになりますが、それはまた別の話)。やがて中学を卒業し、別々の高校へ入ると次第に疎遠になり、成人式あたりに少し会話を交わしただけで、連絡先も知らず同窓会のこの日まで10年以上の時が流れてしまいました。

一通り話した後、ふとA君が「まだ音楽やってる?」と僕に聞いてきました。僕は音楽はいろいろ聴いているけど、ギターはここしばらく弾いていないと答え、そっちは?と聞き返しました。A君は最近になって、土日を使って知り合いのおじさんたちと洋楽のコピーバンドをやり始め、ベースを担当していること、奥さんに内緒のヘソクリで高額のアップライトベースを購入したことなどを照れ笑いを交えながら教えてくれました。

僕はそれを聞いてなんだか嬉しくなってしまったのです。中学時代の小さな遊びの種が、やがて芽を出し、花を咲かせ、時の流れと共におそらく何度か枯れたりしたこともあっただろうけど、その度にまた芽を出し、花を咲かせ……。あの頃一番熱心に打ち込んでいたことが、当時では想像すらできなかった形で今も続いているのです。嬉しい、そしてうらやましい!!


その時は、まさか一か月後に、そんな状況とは裏腹な音楽人生を、友人の芝居で目撃するとは思いもよりませんでした…。




と、まあ、前置きが長くなってしまいましたが、(裸)ミチコイスタンブールさんの『千と千尋の上石神井』を観てきました。

物語で描かれているのは、「決断」であったり、「現実と向き合うこと」であったり、「責任」であったり、歳を重ねればきっと誰もがぶち当たる壁というやつです。主人公の寺本は不器用を絵に描いたような人間で、大人としてもいろいろ残念な男です。そんな寺本にはかつてバンドで成功する夢があったが、夢を捨て会社員として働く日々。だがそれもうまくいかず…。

ただ、この劇はただのダメ人間物語ではありません。そこが面白いところです。確かに寺本はポンコツで自我というものが欠けています。口癖は「ごめん」。ギターを始めたのも無理やり。バンドをやめたのも急かされて。クライマックスでの責任の取り方も結局ママの受け売りです(しかもそもそも仕事で挽回するという発想がない)。


しかしながら、彼は自らのダメさに加え、周囲に振り回されながらも、なんだかんだ救われています。実は多くの登場人物が彼を必要としているんです。バンドマンとしての寺本、恋愛対象としての寺本、なんだかんだいっても夫としての寺本。そして、かつての自分たちを思い出させてくれる寺本(このエピソード最高、もっと知りたかった!)。そう、それなりに愛に満ち溢れているんです。残念なことに寺本自身はそれをどこまで自覚しているのか、いやほとんどしていないでしょう。辛い人生だと思いながら、きっとこの先もたくさん失敗し、その度に責められ、謝ったり、落ち込んだりするでしょう。

でももうどこにも頼らないし頼れない。スナックにも、あの神社にも。境内の奥がどこに通じていようが、もはや関係ありません。タイムスリップなど、この物語では無力です。しかし、彼には救いがあります。愛されているのです。きっと。

寺本だけではない、みんな、前を向いて生きていくしかない。過去にとらわれず……(ん?むしろ、これは周囲の寺本離れの物語でもあるのか?なんて)。

ところで、何かをあきらめ、現実に立ち向かうことは大変ですが、本当に大変なのは、夢を追い続ける方かもしれません。妙法寺や岸井や雷門はその後どうなるのでしょうか?巷では「音楽で飯を食う夢は過去の時代、やるならせめて副業で」みたいな話をよく耳にします。いや、そもそも人生は夢なんてあってもなくても苦しいのかもしれません。生きるだけで精一杯ですから。苦しみつつ、その中で微かに光る希望みたいなものを信じたりして、気が付けば歳をとっていくのでしょうか。うーん、こういうことは真面目に考えない方が良いのかもしれません。答えは誰も教えちゃくれません。


とにかく『千と千尋の上石神井』、名作でした。リアリティとファンタジーを同時に矛盾なく描く劇団だと認識しております。今後も楽しみにしております。ひさしぶりにギターを手に取って弾きたくなりました。