東京でイケ面(元会社後輩)、S平(会社後輩)と飲んだ。
「おっさんずラブ」の続編ではない。

「死神、最近ヤバくない?」
「ああ、キャバクラで割り勘提案したら、『払えばいいんでしょ!?』って逆ギレよ」
「年齢のせい?それとも更年期?」
「どっちもだろ。老害の二刀流さ」

そこへ颯爽と登場した主役、死神。
「すまん、ちょっと抜いてたら遅れた」
一同沈黙。この空気、カットできない?

いや、むしろ缶詰にして保存したい。
「仕事(意味深)終わりのビールは最高~」
再び沈黙。

「そういや、定年近いけど貯金は?」
「ゼロ!」
「家のローンは?」
「1000万!」
「新車買った?」
「200万!」

毅然とした態度であった。
何でこんな堂々としてられるのだろうか・・・

「女のいる店行きたいんすけど、まだ明るいんでコンカフェ行きますか」
「う~ん、カネねぇからな」
「珍しいすね。まぁワンタイなら大丈夫っしょ」
「それもそうだな」

俺たちはコンカフェに行った。

「みなさん何のつながりですか~」
「ゴミ」
「え?」
「俺たちは全員ゴミ。つながりはその一点のみ」
女は固まっていた。時間停止AVのモノマネを頼んだつもりはなかったのだが。

時が再び動き出すと店員のドリンク注文タイムが始まった。
「シングル1000円、ダブル2000円、トリプル3000円です」
「シングルで」俺は即答した。

「待て」死神の目が光る。「トリプルだ」
「ありがと~ございま~す!!!」

1ターン目。12,000円。

女は俺たちのアキレス腱を見抜いたようだった。

すぐに酒を飲み干して、再度おねだりしてきた。

「『トリプル』に行かせるなーーッ!!」
「いいや、限界だ。行くね!!」
「ありがと~ございま~す!!!」

2ターン目。12,000円。

これが「死神の鎌」か。

「ハァッ・・・・ハァッ・・・あんたカネないって・・・」
「俺はこの瞬間に賭けてるんだよ・・折角の出会いを大切にしてェ・・・」
「全然可能性ねぇよ!巻き込むなよ!!」

俺は死神にムカついてしまい、怒りのままに暴言を吐いてしまった。
死神は黙っていた。「静かなるドン」のように。

「お前、キレやすくなってねぇか・・・?」

はっ・・・
魔法が解けたように、酔いが醒める

俺は、キレていた・・・
今まで、感情をコントロールできる人間だと思っていたのに
こんなコンカフェのドリンクだかなんだかでブチ切れちまってる・・
なんて情けない・・・
老害は誰でもない。俺だったのだ

「ストレス、溜まってたんだな・・」
「・・・すいません」
「気にするな。まぁ飲めよ」
「あ、トリプル追加で!」
「ふざけるなーーッ!!」

以下、無限ループ。break条件は財布の底が見えるまで。
もしくは、死神が本当に死神になるまで。

老害物語『死神と三バカ』

~fin~