滋賀の北部、田んぼに囲まれた秘境。
ハエの大群が我々を歓迎する中、BBQの火が上がった。
「寒くね?」T田が震える声で言う。
琵琶湖の北、ここは夏でも肌寒い。
まるで冷蔵庫の中でBBQしているようだ。
しかし、辻本精肉店で仕入れた肉(1000円/100g)が、その寒さを忘れさせてくれた。肉は正義、肉は防寒具。
震えつつ、2hくらいBBQで暖をとりながら過ごす。
そこへ、堀田さんの旦那が現れた。30歳前後でガタイのいいスポーツマン風。
「渓流で珍しい魚が獲れたんですよ。焼かしてもらってもいいです?」
「ええ、どうぞ」
旦那は何回も火加減を確認しつつ、魚を焦がさないように丁寧に焼いていた。
多分、アマゴって魚の名前だったと思う。。(とにかく珍しい魚と旦那は力説していた)
焼いている間、旦那の身の上話を聞いたところ、自衛官上がりで今は林業をやっているとのこと。
炭も自分で作ったのだそうだ。
今は炭を手作りできる人は日本に数人しかいらいらしい・・つまり、俺たちは幻の炭職人とBBQをしていたわけだ。
「この辺のおすすめ観光スポットってあります?」
「蛍ですね。6-7月には見れますよ」
蛍か...もう長い間見ていない。昔は俺の実家(佐賀)にもいたのだが。今はもうない。(川が汚れたのだと思われる)
「寒くなってきたんで離れに戻りますわ」
離れに戻って風呂に入る。
風呂上がり、S井が騒ぎだした。
「ドライヤーがねぇ!借りてきますわ!」
まるで命がけのミッションのように飛び出していった。
S井が本宅から戻ってきたとき、手にはドライヤーと...酒?
「ナンパ成功っす。女から酒ゲットっすわ。」
S井のニヤリとした顔に、T田と俺は呆れた。
(旦那は元自衛官だぞ...殺されても知らんぞ...墓石に「ナンパ失敗」と刻むぞ...)
その後、俺らはS井の戦利品、スーパーいいちこを飲み続けた。
「次の日にダメージが残らない、良い酒らしいっす」
俺たちはS井を信じて瓶を空にしたのだった。
まるで明日なんて来ないかのように。
それから数時間くらい飲んだのだろうか...記憶は断片的だ。
気がつけば我々は眠りの川に流されていた。
明日の二日酔いを恐れつつ...