いつも斬新なアート作品を展示して美術界の注目を集めている我が市原市の高滝湖畔美術館。前回の金氏徹平展も度肝を抜く面白さだったが、今回も今注目の絵本作家・文芸作家ミロコマチコの大作品展。

(チラシ表)                    (裏、あれっ 逆さ? なぜか原因不明)

 

 ミロコマチコは絵本「オオカミがとぶひ」(2012年)でデビュー、それが第18回日本絵本大賞を受賞、その後も国内外の絵本賞、文芸賞を立て続けに受賞するなど1981年生まれの現在そして未来の美術界を担う若手アーティストだ。

 

 オープン2日目の7月17日(日)作家自身によるLive Painting「海を混ぜるⅥ」はダム湖を一望できる多目的ホールで午後3時開始された。

 

これも今注目のピアニストharuka nakamuraの演奏と共に登場したミロコマチコ。会場奥に設置された巨大な白いカンバスに細い体で画面いっぱいにあらかじめ用意したコマ片を貼りつけたり、アクリル絵の具を両手いっぱいに絞り出して画面に擦り付けていったり。作家の頭の中にあるデザインが眼前でゼロから生まれだす、貴重な瞬間を目の当たりにした。

(タウン紙「伝心柱」より。ミロコマチコご本人とharuka nakamuraさん)

 

 2時間に及ぶライブパフォーマンスの合間に美術館へ。

 

入口でまず度肝。エントランスホールに置かれた荷車。アイヌの木彫りのような、でも巨大なクマが四つん這いになってその車を曳いている。横に回って見るとその荷車の横っ腹が開いていて内部が丸見え。天井・床・壁8面びっしりに赤と黒の絵。それぞれの壁面が絵本「あっちの耳、こっちの目」(クマのおはなし)の各場面になっている。

 

 

 第1展示室に入るとここにも別の荷車2台。こちらも同じ「あっちの耳、こっちの目」のカモシカが引く車でタイトルは(カモシカのおはなし)。この絵本はシリーズになっているらしく、このほかにも(ウサギのオハナシ)、(コウモリのおはなし)…と続く由。

 

 

 

荷車だけではない。巨大なカモシカが2頭反対方向を向く「ふたりの音」(162.8cmx458.0cm), そうかと思うとあまりに小さくてしかもエレベーター脇や階段脇など意想外の場所に張り付けられたキツネや小鳥。

 

 

 どれも童画風に大胆な構図、くっきりとした鮮やかな色彩。絵本でのストーリーは知らないが世界中の絵本賞、文芸賞を獲得しているのだから、ストーリーテラーでもあるのだろう。 オノマトペーを自在に操り、それをフォントの多様性とサイズで表現する手法も見事!

 

 

(第1展示室から見下ろす地下展示場)  (奄美大島からの挿画通信も)

 

 まさに奇才だ。しかも、恐らく、彼女一人ばかりでなく、また美術の世界ばかりでなく、あらゆる分野に現代の日本、世界、に数えきれないほどの奇才・天才が輩出、その才を存分に発揮しているのだろう。

 

 願わくば、それら若い才能がノビノビとその能力を発揮してほしいものだ。理由も無く他国に侵入してその国の人の命を、才能を潰し、あまつさえ自分の国の才能、命を潰す、そんな愚かな戦争に駆り出されないように。

 

 そんなことを願いつつ元の多目的室に戻ると、さっきのLive Painting「海を混ぜるⅥ」は完成していて、青一色の海中に大小様々な魚達が遊泳していた。自由に、闊達に。