訃報が届いた。
中学・高校と同級生だった友の奥さんが亡くなられた。
知らせを聞いて、私はあいつの満面の笑顔しか浮かばなかった。
学生の頃から、いつも明るく笑顔の似合う男だった。
誰もが家業を継ぐ為に医学部進学を思っていた。
しかし、彼は気になっていた「哲学」の道へ進んだ。
その後、彼に会ったのは十数年前の同窓会である。
あの頃と同じ服を着て、あの頃と同じ笑顔だった。
文学部哲学科卒業後、医学部へ進学した。
その時、まだ学生だと笑った。
5年前の同窓会で、彼は今まで以上の最高の笑顔で「嫁さんをもらう事になったっよ!」と報告した。
15歳も年下の奥さん・・・と、同級生達が囃し立て祝福した。
2年後、娘さんが生まれた。
そして、奥さんは32歳、結婚5年目にして生涯を閉じた。
あまりにも早すぎる別れである。
仕事を早退し、斎場で彼に会った。
いつもの様に、あいつは必死で笑顔でいた。
疲れて眠った娘を、宝物の様に抱きながら、あいつは笑顔でいた。
私は、辛くて仕方なかった。
駆けつけた同級生達も、同じ気持でいた。
妻もあり、子供もある同じ立場である。

帰宅して、1人で飲んだ。
「あいつ、笑顔やったっつよ!いつもの様に・・・。娘さんがあいつに抱かれて寝てた!」
そうママに報告した。
辛くて仕方なかった。
「奥さん、子供を残してくれたんだから・・・。」
とママが呟いた頃、少し明るい気持ちになれた。
あいつの笑顔が翳る事は無い!と、私は信じることにした。