帰宅すると、次男はダイニングテーブルで宿題をしていた。
いつになくうつむいたままの不自然な彼である。
理由はママからの電話で聞いていた。
学校で、友達とのふざけ合いが高じて摑み合いになり、倒れた彼の顔面を友達が踏みつけたそうだ。
ママは相手がやりすぎだと言うが、私には許容範囲であり彼が泣きついてきたなら怒鳴り倒していた所だ!
それを知っててか・・・、「絶対、お父さんにはこのことを言わないで!」と懇願したらしい。
だから、私も彼の右頬のアザも、腫れあがった左頬も、気付かない振りをしてあげた。
それが、親父と息子だと思っている。

私の小学校時代は、もっと過激に暴力を振るった時代だし、ケンカに負けることは恥ずかしい感覚すらあった。
ケンカをしたことで、しこたま先生の説教とゲンコツを喰らっても、先ほどの相手とのケンカで、自分が勝っていた事が自分の中での全てであった。
相手を殴ると、自分の拳がどれほど痛いかを知っていた。
真剣に殴ればこその拳の痛みである。

ケンカを正当化する気持ちはさらさらないが、次男が親父に知られたくないのならそれでいいと思っている。
それは、次男の腹の中の事である。
そんな、悔しさをいくつ持てるのかが「本当の男の太っ腹」だと思っている。