長女は吹奏楽部で、「オーボエ」を吹いている。
小学生の頃、ピアノも習わせたことのない彼女が、中学で選んだのは「吹奏楽部」だった。
理由は簡単、入学式の時の演奏を聞いて、すぐ入部を決めた。
楽譜も読めるはずはない。
ましてや、「オーボエ」という楽器というかパートというか、少ないらしい。
当然、部員にオーボエを担当する先輩はいなかったので、教えてもらう事に恵まれなかった。
しかし、顧問の先生が「どうせ、楽譜も楽器も知らないのなら、いっそオーボエをあてがっておけば・・・。」と、思われたのかは定かではないが、今年で4年目を迎えている。
私から見れば、この難しい楽器に、彼女はどんな思い出を作るのだろう・・・と、素敵な事だと思っている。

中高一貫教育の学校なので、吹奏楽部は中学1年生~高校3年生で構成され、吹奏楽コンクールは「高校生の部」での出場だ。
出場校の中で、中学生の幼い顔も並んでひときわ目立つ。

いよいよ娘達の学校の演奏が始まった。
課題曲は、指導者の意向だろうか、少しクラリネットの音を小さくしてその後につなぐ。
結構引き込まれて行く感じに仕上げられ、いままでの練習の積み重ねが伺えた。
続いて自由曲である。
私にとっては、娘が入部以降・・・最高の選曲で仕上がりに思えた。
一瞬場内がシーンとなった。
鳥肌の立つ気配がした。

結果は「銀賞」であった。
授賞式に望んだ、部の高3は壇上で悔し涙を流していた。
卒業の年である。
6年間在籍した部での最後のコンクールである。
それで良いんだと思う。

この日、私は娘達の学校の次に演奏した学校の自由曲を聞いていて、涙がこぼれた。
その涙は、無意識のもので、私の後の席に座っていた高校生が、たぶん演奏を終えた学校の生徒が、
「はぁ~、悔しいけど私達とは格が違うわ!なんか、感激してうっとりして涙が出っぱなし!」
と喋ったその声に、私も目尻を伝う涙をようやく感じたのだった。
それから、数校の演奏も鳥肌が立った。
「銀賞」それは、くやしいけど「最高の銀賞」だった。
でも「金賞」では無いのである。