「ボク、姉ちゃん達のお下がりの服ばっかりやわぁ・・・。」
と、小学6年になった長男が口を尖らせた。
「何か文句があっとか?」
と言う私に、ギロッと睨んだ。
「あのな!姉ちゃんのお下がりなんか、貰いたくても貰えん人の方が多いのに、お前はいいなぁ・・・。羨ましいなぁ・・・。」
と重ねる私を無視した。
そう言えば、今年の冬は2枚のシャツとズボンだけを交互に着ていた。
それもお下がりだが、姉からのものでなく、知り合いの男の子のお下がりだ。
しかし、高校1年と中学2年のふたりの姉から下がってくるので、彼のタンスは溢れんばかりの服の量だ。
一人っ子育ちの私には、『お下がり』に対して強い羨望があった。
友達の持ち物や服に、兄ちゃんや姉ちゃんの名が書かれているのが眩しかった。
裾のすり切れたズボンも、使い込まれた勉強道具も、私の持つ新品では太刀打ちできない風格があった。
「つぺこぺ言うな!」
と私は怒鳴った。
明日、新1年生の入学式に出席する6年として、彼はちゃんとした服をイメージしているのは知っていた。
昼食、自宅に戻ると、
「こんなに安かったから・・・。最近のパンツは、このくらいの長さが流行りみたい・・・。」
と、ママは私に言い訳をしながら、1枚のダンガリーシャツと2本の七部丈パンツを見せた。