夢みたいな時間だったね。
幸せな、夢を見ていた気がする。



改めて
舞台『遠く吠えて花火をあげる』
ユメ・シノブ役を演じました、鶴野有紗です。

本当にたくさんの想いを感じることができて、それを見に来てくれた皆さんに届けることができて、とても幸せです。

せっかくなので今回は色々と思っていた事を文章にしようと思います。

ちょっと長いかもですが、良ければ読んでね。




私は去年の『遠く吠えて花火をあげる』でもユメ・シノブ役として出演しました。
今回は一年を経てまた演じることとなったのですが、これまた色々と心境も変わっていて驚きの連続です。

そもそも去年もユメそしてシノブと向き合い続けて、分かり合えるところと全く理解できない所がたくさんありすぎていっぱいいっぱいだったんです。

今回も強く思ったけど、私自身「笑顔」に対する気持ちはシノブと完全に一緒。

笑う門には福来ると言いますし、とりあえずどんな状況でも表向きは笑っとこうって思います。

笑ってれば、どれだけ辛くてもほんの少し報われる気がするし。

なんか、笑ってないと何かに負けた気がするし。

笑ってないと不安、とまではいかないけど、周りの空気を少しでも良くして自分を保ちたいから、笑ってるのかも。

その時の感情なんてあんまり覚えてないんだけどね。


だからこそ、シノブは何をもってして死を選んだのだろう?ってずっと疑問だった。


私も死にたいと常日頃思ってはいるものの死ねない小心者です。

憂鬱な毎日からどうにか逃げたいのに、逃げる勇気はない、そんなどうしようもない人間。

そこはユメに通ずるとこがあるのかも。


コンちゃんが言ってた、幸せで楽しくて、それが逆にダメだったのかもしれない。
なんとなく、ふらっと、花火が綺麗だなと思った時に最期の一歩を踏み込んだのかもしれない。

「人は苦しい時に笑うのよ」

そう言ったシノブは、どれだけの苦しみを抱いて笑い続けていたのだろう。

そんな事をずっと考えていました。


しかし、シノブの事を考えれば考える程、ユメとしての心が邪魔をするのです。


わかりたい、わかりたくない、わかってしまいたくない、わかりたかった。


様々な感情が溢れて、止まらなくなるのです。



私は何度も脚本演出の桐山さんに言いました。

「19歳の女の子が背負うには重すぎる」

って(笑)


姉がいなくなって、両親もおかしくなっていなくなっちゃって、祖父母の家に住んでるのにもう祖父母もいなくて。

あげくの果てに味覚もなくなって。

やっとの思いでもう一度作ったハッピーブルースという家族も、最終的にはそれぞれ離れてしまう。

どんな気持ちで居ればいい?
どう見届ければいい?

どれだけ歩み寄っても、それが最終的に違うと言われれば、終わりと言われれば、呆気なく悪者になり、呆気なく終わりを迎える。


苦しいも辛いも何もかも、表に出ないと理解はされないし、見えない努力は評価されない。
そんな世の中だ。

負の感情は難しいもので、どれだけ歩み寄っても、当事者の痛みは当事者にしか理解はできない。



私も味覚を失うまではいかずとも、本当に生きるのが苦しくてご飯を上手く食べられない時期がありました。

何を食べても触感が気持ち悪く、美味しいと思えないのです。

あんなに好きだった惣菜も、お菓子も、美味しいと思えなくて、それが大層悲しいのに解決方法も見つからなくて

出口のない悩みは、ただただ、ゆっくりと胸の奥にしまい込まれるのを待つしかない。


消えることはない、傷。


それを共有する誰かもいなかったし、外に出ればヘラヘラ笑ってお仕事して、家に帰ったら死んだように寝て、

生きるってなんだろなぁ

と毎日考えていた気がします。



誰だって、死にたくて生まれたわけではないはずなのに

生きたいと願わなきゃ生きてられないほど追い込まれている人が、この世にどれくらいいるのだろう?

逆に、そんなの全く思わないで生きている人もどれくらいいるのだろう?


悩みの大きさなんて人それぞれで比べるものじゃないのもわかっているけど

どうしても劣等感とかが自分を苦しめて

あの人は生きるの楽そうだな……
だなんて、主観的な物の見方をしてしまったり

そんな自分に気づいて憂鬱になったり

あぁもう人生って踏んだり蹴ったりすぎるって思ったりもする。


人生はプラマイゼロで出来てるから、マイナスな事があったらプラスの事があるよ!とか

今日が辛くても明日はそうじゃないかもよ!とか

そういう言葉が私は苦手で。


だって『今現在』が幸せじゃないのに未来に価値はある?

明日の私が幸せだろうが、今日の私が幸せじゃないと意味なくね?


今日死んだら終わりじゃん(笑)









これから、を見られる人は強いと思います。

未来があるって素敵だと思う。


私は気づいた時には将来の夢なんて持てなくて
健康に生きることしか考えれられなかった。

今を生きるのに、精一杯。

キャパが今日までしか毎度もたない。


人それぞれなんだよ。

悩みも、生き方も。


解決法も。



そこを比べちゃダメだし
もっと自信をもつべき


まぁ、それが出来てたら苦労しないんだけどね!


結局は、こんな自分とのせめてもの向き合い方を少しずつ学んだ方が、生きやすいなって最近気づきました。




ユメとして、最後の方のシーン。
みんながここを出ていく選択肢を見守るシーン。
おそろしい程ユメのセリフはありません。
ただ、黙って、見るだけ。

初演の時はキツすぎて、辛すぎて、ずっと俯いていたけど

今回はみんなを見続けようと覚悟を決めました。

これは誰かのためではなく、自分自身の為でした。

未来を見る皆を見届けて、今との自分に踏ん切りをつけなきゃいけない。

今を、過去にする作業。


そこにはウツロくんが言ってくれた「君がユメだからだよ」というセリフがずっと心にありました。

ハッピーブルースのユメじゃない。
シノブの妹のユメじゃない。

たった1人の女の子、葉月ユメが、少しでもこれからと向き合う為に、みんなを見続けようと思いました。

実際見続けて、これからと向き合えたか?と言われると答えはわからないです。

正直そうなるには時間がまだ足りない。

けど確かに、もうそれらは過去になっていく。


コンちゃんの死も、最初は信じられなかった。
どうしてユメは見届けられたの?
私なら堪えられないけど……。
と不思議でしたが

ユメはどこまでも『ハッピーブルースのユメ』で居続けようとしたんじゃないでしょうか。

他の住民が『ハッピーブルースの』という肩書きを外そうとしてるなか、1人だけ最後までずっとその肩書きを背負い続けた。

誰よりも不器用に愛することしかできないユメの事を思うと、胸がぎゅっとなります。


コンちゃん役の三好さんから
「俺は死んだ後、ずっとユメを見てるよ。最後までずっとユメの感情とリンクしてるし、ずっとユメの味方だよ」
と言ってもらえた時、ストンと何かが整理整頓されたような気持ちになりました。

コンちゃんも同じく『ハッピーブルースの』という肩書きをずっと懸命に守ってくれていた人だった。

そんなコンちゃんのセリフで
「そんなの、どうでもいいってさ」
というものがあるのですが
それを舞台上で聞いた時、じんわり来るものが毎回あります。

今まで固執してきた事、縋ってきたもの、目を背けてきたもの、自分自身

なんかもう、それら全部、どうでもいいのかもって。


極めつけはウツロくんです。

ウツロくんって名前の通り虚ろな目をした印象を台本から受け取っていたのですが、安井さんの演じるウツロくんの、なんという感情の籠った演技。

喜怒哀楽がとても純粋で真っ直ぐ。

こんなウツロくんもあるのか!と脚本演出の桐山さんと驚いた記憶があります。


とても真っ直ぐな優しさをユメに届けてくれるので、それに感化されて、どんどん自分自身と向き合えた所もあるのかもしれません。

私も安井さんも相手の感情を受け取って演技したいタイプだから、お互い新鮮な気持ちを持続しよう!と、毎シーン立ち位置や動きを変えてみたり、視線が交わるところを変えてみたりと色々挑戦させていただいたりもしました。

本当にひたすらに感謝です。



とても素敵な役者さん達と演技が出来て、学べる事が多い日々でした。

だからこそ自分の至らぬ所に苦戦する日々でもありました。

ユメ、シノブは評価されにくい役だと思います。
周りから共感を得られない役ですし、立ち回りもとても難しいなと毎度思っていました。

でも、それでも誰よりもハッピーブルースの皆を愛し続けることが、何よりハッピーブルースの皆の為だと思い、笑い続けました。


私はこの1ヶ月で、とても口角周りの筋肉が発達したと思います。

笑うのが上手くなったと思います。


ユメも、その過程があったのかな。

無理して笑う時、思ったよりもスムーズに上がる口角に気づいたりしたのかな。



みんなみんな、平等に幸せになればいいのにな。


難しいよね、ほんと生きるのってさ。




私はオタクなので、推しに生かされてると毎日思っています。
推しが生き甲斐。

推しが笑顔でいる限り生きていられる。

好き、ってとても生きるエネルギーになる。


このブログをここまで読んでくれた優しいあなたはどんな「好き」をもっていますか?

自分を大切に思えなくとも、好きを大切に思えたなら、それもひとつの幸せだよね。


私達は確かに、生きてる。



ほんの少しでも、生きててよかったと思えるタイミングが増えるように

私はこれからも演技をしていきたいし、皆さんと言葉を交わしたいし、推しを摂取したい。


限りある人生の中で、辛い思い出より楽しい思い出を強く残したい。

ちょっとでも笑ってたい。



不器用に、生きていこう。

ずるく、生きていこう。


自分をほんの少しでも愛せるように、周りに優しくしよう。




夢みたいな日々をありがとうございました。
これらすべて、観に来てくださった皆様、そして支えてくださったスタッフの皆様、素敵な演者達のお陰です。


これからも、少しでも幸せの共有をしていこうね。

𝑩𝑰𝑮 𝑳𝑶𝑽𝑬______!!!!



あでゅー!