M78星雲光の国。

 そこに広がっているのは美しい水晶を使って垂れられた゛クリスタルシティ”。

 そのある一角にひっそりと建つウルトラの国のカラオケボックスに、ギンガビクトリーは呼ばれていた。

 

 目の前で熱唱しているのは、ウルトラマン。

 

 普段はヒーローとして活動している彼も、今日は非番なので羽を伸ばしているのである。

 

 しかし、本来別々の世界で活動する2人が、どうして一緒に休日を過ごしているのか?

 

 

 それは数日前、用事で光の国に来たギンガビクトリーに、休憩中のウルトラマンが親しげに声をかけてきたことから始まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

マン「やあ、君が噂の合体戦士、ウルトラマンギンガビクトリーだね?」

ギンガビクトリー(以下、ギンビク)「そうですが…あ、あなたは!」

マン「ハッハッハ、そう硬くならないでくれたまえ。私は一番最初に地球へ行った戦士だが、階級ではゾフィー兄さんやウルトラの父、母にはかなわない、一介の戦士なのだから。」

ギンビク「いえいえ!ギンガストリウムの頃、何度もウルトラマンさんのスぺシウム光線には助けられました!オーソドックスかつ強力な一撃。さすが、初代ウルトラマンさんです!」

マン「ハッハッハ!やめてくれ、照れるじゃないか。」

ギンビク「お会いできて光栄です!…でも、今、お仕事中では?」

マン「いや、今は休憩中さ。後輩たちの指導は、タロウが熱を燃やしているからな。」

ギンビク「タロウさんにもお世話になりましたしね。」

マン「私はそのころ、一度君たちに襲い掛かったことがあったな。あの時は、すまなかった。」

ギンビク「いえいえ!」

マン「そのお詫びと言っては何だが、今度何かおごらせてくれ。カラオケなんかどうだろう?」

ギンビク「え、カ、カラオケですか!?」

マン「地球の若者はみんな好きなのだろう?私も大きな声を出すのは好きだし、歌も大好きだ。どうだ、一緒に。」

 

 そう誘われ、相手がウルトラマンということもあり、好奇心と少し威圧されたような感じもあって、ギンガビクトリーは承諾し、そして、今に至るのである。

 

 

 

 

 

 

 

マン「むね~ぇに♪つけ~てる♪ま~ぁくはりゅうせ~♪」

ギンビク(すごく軽快なステップだ…普段はしっかりしていらっしゃるけど、今日はよっぽど、楽しみにしてくださったんだな。なんだか申し訳ない。)

マン「ずぃむぁ~んの!じぇえ~っとでっ!て~きうぉおう~つ~!」ズッダンズッダン

ギンビク「あれ、急にロック調に!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

マン「ひかりのくにからぼぉおくらのためにっ♪きぃいたぞ!わっれら~ぁの♪うぅうるぅうとぉおらぁまぁ~ん!!」

キィイィーン!

ギンビク「シャウト!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

<間奏>

 

マン「はっはっは、びっくりさせたね。自分が歌われてるせいか、なんだかヒートアップしてしまうんだ。ちょっとウルトラダイナマイトしそうになったよ。」

ギンビク「え、う、ウルトラダイナマイト!?」

マン「!い、いやいや何でもないさ。」ハッハッハ

ギンビク「……は、はい。」

マン「おっとそろそろ始まるな。てにぃいした♪ぐぁ~んが♪びゅ~びゅびゅんとうぅなる~っ♪」

ギンガビクトリー(ちょと意外な一面だけど、まあウルトラマンさんも羽目を外してる、ってことだな。うん、そうだきっと。)

マン「ひっかりのくにからち~きゅうのためにっ!きぃいたぞ!わぁれら~っのっ!ううるうううとぉおらぁまぁあぁあん!!!」シュアッ!!

ギンビク「ハメ外しすぎっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒートアップしたらしいウルトラマンが思い切りシャウトして飛び上がり、ギンガビクトリーは衝撃で盛大に引っくり返る。

 ウルトラマンはそのまま吹っ飛んでいき、カラオケボックスを突き破って外に飛び出すと、ウルトラ戦士の訓練場に頭から墜落し、『犬神家の一族』のごとく、逆さまに突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ギンビク「あーあ…」

マン「はっはっは。いたた・・・ちょっと熱くなりすぎたようだ。ん?あれ、何か体の下で動いてる?」

ギンビク「え、どうしたんですか?」

マン「こ、これは!!」

ギンビク「ゑ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョーモノイド(恐竜)「がおーっ!」

マン「ウワアアアアア訓練用の怪獣だぁああ!」

ギンビク「え、訓練用ならウルトラマンさん余裕じゃないですか。たぶんマグラーより弱いですよソイツ。」

ジョーモノイド「がおお!!」ガブガブ

マン「いや、これダメ!食われる!食われるって!」

ギンビク「え、えぇえ?」

マン「やばい、へ、ヘルプ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ギンビク「い、いやいやウルトラマンさん…」

マン「た、たすけてヴァヴァヴァヴァヴァヴァッ!?」ズルズルッ!

ギンビク「え」ええ!?う、ウルトラマンさん!?」

マン「こいつパワーすごい!あ、し、しかも胸狙ってる!胸狙ってるこいつ!!」

カラータイマー「ピコンピコンピコンピコン」

ジョーモノイド「がおお?」ジー

マン「ちょっと!どこ見てるのよエッチ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ギンビク「音がして、しかも点滅してるから反応してるんじゃないですか!?」

マン「何それ!?ガじゃん!光に反応して集まってくるガじゃん!!」

ジョーモノイド「がおぉおぉ!」ガブッ

マン「アアアアアアアアアーッ!!」

ギンビク「うわ、な、何が!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マン「ああああああ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

ギンビク「カラータイマーかじりとられてるうううううう!!」

マン「し、しぼむ…」

ギンビク「う、ウルトラマンさぁあぁん!!」

ジョーモノイド「あーん」

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョーモノイド「ごくりんちょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

マン「わ、私のカラータイマー…ガ……」

ジョーモノイド(あれ引っかかったかなケホケホ)

ギンビク「あ…あああ…ど、どうしたらいいんだ!?」

マン「」チーン

ジョーモノイド(のどにつっかえてるわこれ)

マン「…踊れ…ええ加減に返さんかいい!」グワッシ!

ジョーモノイド「!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギンビク「え、カ、カラータイマーとられちゃったらしぼんじゃうんじゃ!?」

マン「何アホなこと言うてんねん!?ええから早うわしのタイマー引きずりだせや!?」

ジョーモノイド「あがあが」

ギンビク(『龍が如く』の人みたいなしゃべり方になってる…)

マン「オラ、何ぼさっとしとるんじゃワレ!!早よこいつの口ん中でも手ェ突っ込んで、引っ張り出さんかい!!」

ギンビク「え、は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョーモノイド「うががががが」

ギンビク「うえっ…ねちょねちょですぅ…」

マン「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ」

ジョーモノイド「おえっ!」

ギンビク「あ、ありましたカラータイマー!」

マン「なら早う戻さんかい!!」

ギンビク「は、はい!」カチャリ

マン「おふう///」

ギンビク「」ドンピキー

マン「ふう、やれやれ危なかったね。」ムクリ

ギンビク「あ、口調が元に…」

マン「はっはっは、変なことを言わないでくれ。私はいつも、こういう口調じゃないか。」

ギンビク「え、あ、そ、そうですね…」

ジョーモノイド「」キュー

 

 

 

 

 

 

 

 

ギンビク「しかしウルトラマンさん、カラオケルームから勢い余って飛び出す上に恐竜にカラータイマー食べられるってちょっとはっちゃけすぐですよ!今回はなんともなかったですが、もし闘い中だったら一体どうなっていたか…」

マン「そうだな。ちょっとはしゃぎすぎたみたいだ。反省しなければ。」

ギンビク「ふふふ。」

マン「後輩に、恥ずかしいところを見せてしまったな。」

ギンビク「でも、普段見られないウルトラマンさんの地面を見られたから、ちょっと面白かったですよ。」

マン「おいおい。はははははは!」

ギンビク「はははははは。」

マン「ははははははあぎゃぁ!!」

ギンビク「え、な、な何すか!?」

マン「」ピクピク…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョーモノイド「がうう…」

ギンビク「恐竜がレッドゾーンに食らいついてるううううううううう!!??」

マン「あぁあ!!とれる!!何かとれる!!とって!!早く恐竜とって!!」

ギンビク「で、でもめっちゃがっつり食らいついてます!!」

マン「えええ!?なんでもいいから早くとって!!なくなる!!なくなっちゃうから!!」

 

 みんなのヒーロー、ウルトラマン。

 彼にも、時々こんな愉快な失敗があることもある。

 

 おしまい。

 

 

 

 

マン「終わらないで助けてえええええ!!」

 

 

 

 

 

このお話はフィクションかつ二次創作です。実際の人物・団体とは一切関係ありません。