意地悪婆さんに会ってきた。
婆さんは、意地悪な感じがすっかりなくなり、大きなテレビの前で、車椅子に座っていた。
挨拶したら、ニコニコ風な返しがあり、違和感を感じた。あくまでもニコニコ風なだけの返し。目の前の景色には、何も映っていない感じの、無意識が繰り出すニコニコ風。
今の婆さんには、僕の見えている世界とは、また違う景色が広がっているんだろう。
婆さんの瞳は、無機質なビー玉みたいで、目の前の僕は、そのビー玉の中には映っていない感じだった。
婆さんの服からは、婆さんの家で使っていた柔軟剤の匂いがしなくて、それが違和感をますます助長していたのかな。
うちに来なくなって、嫌なことや、腹のたつことも、喧嘩することもなくなったやろうから、穏やかに過ごしているのかな。
ずっとニコニコ風。凪の景色を見ていることを、もちろん否定する気はない。
これも婆さんの人生の一部だから。
なんとなく、無機質な心もちで、施設をあとにした。
なんてない面会だけど、やっぱり、また会いにいくと思う。
婆さんは、僕のファミリーだから。
どんな状況であれ、ここは変わらないから。
それだけだ。