- 星々の舟 Voyage Through Stars (文春文庫)/村山 由佳
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居場所を探す団塊世代の長兄、そして父は戦争の傷痕を抱いて-。
愛とは、家族とはなにか。
こころふるえる感動の物語。
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第129回直木賞受賞作品(2003年)。
ちなみに同じ回の受賞作品として石田衣良さん「4TEEN」がある。
村山さん、直木賞受賞してたんだ。
歴史ある名誉な賞の受賞、さすがだ。
主なテーマが叶わない恋である連作短編小説。
ひとつの家族の男女がそれぞれの恋愛について、人生について悩み、
決断を下し、その道を歩いていく…といったお話。
ひとつのエピソードとして兄妹間の恋愛がある。
当時の当人達は血の繋がりが無いと思っていたから、そうなる事に
納得がいかない訳では無いけど、幼少の頃から一緒に暮らしていて
恋愛感情に発展するのか?という疑問はある。
血の繋がってる妹がいる身としては。
本能的に察する事が出来ないものかなとも思う。
好きなものは好きなんだから仕方ないけど。
でも実際、そんな状況になってしまったら苦しいだろうな。
言わば倫理と本能の戦いだから。
本作の兄妹も結果的に幸せになれた訳ではなかった。
その周囲の人も含めた形で。
だけど不幸という訳では無い。
そんな印象を受けた。
娘ほどの年齢の女性と不倫関係にある長男、貢。
歳をとると、とにかく若い娘が良くなると聞く。
本能的には理にかなっている事だ。
貢はその辺り、ちょっと違う気もするけど。
家に居場所のないお父さん。
結構いるって聞く。
つらいだろうなぁ…。
そうはなりたく無いものだけど、僕だってそうなる可能性は
十分にあるよなぁ。
いやだなぁ…。
貢は居場所を畑に見つける。
定年後は農業を、と考えるサラリーマン(貢は公務員だけど)。
割と良くある話だ。
近年は農業ブームとかもあったし。
作中に登場する商社を早期リタイアし、農的生活を送る人の言葉。
自分の仕事の成果がはっきりと目に見えて、手でさわる事ができる。
そういう物こそ信じられる、との事。
なるほど、そういう価値観から農業なんだ。
確かに一般的なサービス業には、欠けている要素かもしれない。
ものづくりをしている仕事だって、現代のように細かく分業していたら
その喜びも希薄になるかも。
だからと言って農業で食べていくのは、本当に大変だって事だけは
知っておいて貰いたい。
昔から近くで見てきた者としては。
あくまでも趣味でやるのであれば、良い趣味だと思うけど。
おっと脱線。
父親の戦争の話。
いつの間にか終戦から65年。
兵として戦争に参加した人は80歳を超えている計算だ。
男性の平均寿命から考えると、そういう人達はかなり
少なくなっているはず。
そんな人達の想いは、十分に次の世代に伝わっているだろうか?
最近、平和について考える機会も増えてきた。
この日本の平和が終わりを迎える可能性も低くない。
戦争と平和。
世界中の人々が考え、行動すべきテーマだ。
あと書きにあった作者、村山さんの言葉。
「自由であること」を突きつめれば、「孤独であること」に耐えなければ
ならない。
確かにその通りだと思う。
孤独になってまで自由が欲しいかと言われれば、悩むところだ。
ただ、村山さんはそうする事で本当の意味で他の誰かと
関われると言う。
なかなか深いな…。
そうなれたら良いかもしれないけど、それって難しくないかな…。
「幸福とは呼べぬ幸せ」
物語の最後に出てくる言葉。
一般的な幸福とは異なる、自分だけの幸せ。
その幸せさえあれば、悔いの少ない人生が送れるかもしれない。
周りからどう見られようとも、自分の人生なんだから、自分び納得できる
幸せを見つけることが出来るのなら、それで十分かもな。