片想い | つれづれログ

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片想い (文春文庫)/東野 圭吾
¥860
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十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。
彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、
彼女をかくまうが…。
十年という歳月は、 かつての仲間たちを、そして自分を、
変えてしまったのだろうか。
過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間たちを描いた、
傑作長篇ミステリー。

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本編が600ページ超えの長編。
性同一性障害をテーマとしたミステリー。

今でこそ有名な「性同一性障害」という単語だけど、この作品の発表は
2000年前後。
当時はその単語の認知率は低いものだった。

世の中の関心が高まっていき、上戸彩が出演していた
3年B組金八先生で同テーマが扱われたのが2001年だそうだから、
東野さんの先見性は凄いな。

ちなみに僕も金八先生でその単語は知ったクチ。
オカマやオナベなどの存在は、ずっと昔からあった訳だから、
そこに名前が付いただけの事なんだろうけど。

話の中心は大学時代の元アメフト部のメンバー。
元マネージャーである美月が犯したと言う殺人事件を中心として、
各メンバーがそれぞれの形でそれに関わっていくというドラマ。

美月をかくまう事になる主人公夫婦だけど、彼女の失踪をきっかけに
事件の真相をつきとめる事に…といったお話。

大どんでん返し的な展開は無いものの、徐々に明かされる真実、
移り変わる状況などミステリー作品の旨みは十分。

そんなミステリー要素はもちろん、「性」という社会問題についても
考えさせられる要素を持った本作品。
主人公がスポーツ記者である事から、スポーツ界の性の問題も
扱っている。

戸籍上、社会上は女性であっても生物学上男性の機能があり、
それ故に女性としては異常な身体能力を有する彼女達。

そう言えば現実問題として話題になった事が最近あった。
2009年のベルリン世界陸上の800m走で金メダルを獲得した
キャスター・セメンヤ選手。
色々と物議をかもしたけれど、最終的には女性として記録が
認められた模様。

ある意味で人間としての限界ギリギリの領域に立っている
トップアスリート達。
種目にもよる話ではあるけど、その能力は持っていまれた
「才能」の要素が大きい。

ある意味では「才能」を競ってりるスポーツ界において、男性クラスの
身体能力的な「才能」を持った彼女達の性をどう扱うのか?

競技としてはきっちりとした基準が必要だから、男女のボーダー
ラインはきっちりと定義する必要がある。

逆にそれ以外できっちりとした定義が世の中にとって必要だろうか?
少しはあるのかも知れないが、殆ど無いんじゃないかと思う。

問題の無い範囲においては、しっかりとした判定基準を設けた上で、
法的な性別も変更出来るような仕組みがあっても良いかも。

心と体の性がはっきりと不一致な人だけでなく、美月のように
男女の間をさまようような人もいるだろう。

そんな人達を自然に受け入れることが出来るような社会が
望ましいのは確か。
その実現のためには、前提として異質な人に対する理解が必要。

それがあれば他の差別や、いじめなどの問題の無くなるんだろうけど…。
なかなか難しそうではあるけれど、ちょっとずつでも前進していけば
誰もが住みよい社会になるはず。

個人で出来る事と言えば、異質な物事に対するための理解のための
勉強と、それに対峙した時の適切な接し方の意識位かな。