家日和 | つれづれログ

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色々な事を徒然なるままに書いていこうと思います

家日和 (集英社文庫)/奥田 英朗
¥500
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会社が突然倒産し、いきなり主夫になってしまったサラリーマン。
内職先の若い担当を意識し始めた途端、変な夢を見るようになった主婦。
急にロハスに凝り始めた妻と隣人たちに困惑する作家などなど。
日々の暮らしの中、ちょっとした瞬間に、少しだけ心を揺るがす
「明るい隙間」を感じた人たちは…。
今そこに、あなたのそばにある、現代の家族の肖像を
やさしくあったかい筆致で描く傑作短編集。

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タイトルの通り、家や家庭をテーマとした暖かな短編集。

この作家さんの作品は初めて読んだ(はず)けど、良い感じだなぁ。
これから追いかけていくかも。

テーマがテーマだけに、極端にドラマチックでは無いのが良い。
日常的というか。


失業して家事にハマる男性のエピソード、かなり好きだ。
周りは一般的な価値観に基づいて失業した事に同情したりするけれど、
本人は状況を悲観すること無く、家事、特に料理の面白さに
ハマっていく。

その温度差が面白い。
価値観は人それぞれ。
主夫に向いてる男性だって普通にいるはず。

僕は…どうかな?
ものづくりは好きだから、料理も嫌いではない。
でも後片付けとか面倒だしなぁ。

社会で働く事と比較して、日常に大きな変化が無さそうなのも
ちょっと物足りないかも。

そんな事を考えた。


作家さんのエピソードについて。

恥ずかしながら「ロハス」は初めて聞く単語。
健康思考や環境思考。
なるほど、そういう事に熱心な人っているいる。

作中でも言われているように、妄信的だったり
押し付けがましかったりする人もいるイメージ。

まぁ、他人の事を考慮せず、自分の価値観を押し付けるのが
いただけないのは事実。

そうでない限り、否定するようなものでも無いのもまた事実。
ライフスタイルは人それぞれ。

特に環境問題に対しては「やらない善より、やる偽善」だと思う。
例外もあるけど。

なかなかの売れっ子作家である男性は、妻や近所の住民達を
モデルにして、ロハスにハマった人達をユーモラスに描いた
傑作を書き上げる。
が、結果的には妻や近所の住民に配慮して、ボツにする事に。

なんて勿体無い!
と思ったけど、そこがこの話の良さ。

他人を笑いの材料とする…とまではいかないまでも、
人が熱心にやっている事に対して、自分の価値観に合わないからと
いって面白おかしく描くような作品は、少なくともその人達が
楽しめるような物では無いよなぁ。

全ての人が楽しめるような、汎用的な物語を作ることは難しくても、
最低限、身近な人達を不快にさせないような話であれば
意識的に作れそうだ。

傑作をボツにしてまで、そこを守った作家さん、偉い!カッコいい!

勿論、世間体を気にして表現を抑えてしまった事は、弱腰と
言えない事も無いけど、作家にだって生活あるしね。

そういう事を含めても、作家というお仕事、やっぱり凄い!


巻末の解説(?)がマンガという珍しいパターン。
益田ミリさん。
たまに見かける作家さんで、結構好き。

奥田さんの文章に対して「なんだかあったかい」と。
同感だ。