- ラッシュライフ (新潮文庫)/伊坂 幸太郎
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泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。
父に自殺された青年は神に憧れる。
女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。
職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。
幕間には歩くバラバラ死体登場―。
並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、
その果てに待つ意外な未来。
不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。
巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。
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中盤までは、伊坂作品の中でも肌に合わない方だなぁと思って
読み進めていたけど、後半の展開…さすが伊坂さん。
お話が進んでいくに連れて独立した物語が徐々に絡み始めたと
思いきや、実はもっと早い段階で絡んでいたという。
全体の構想を練った上で、物語を構築しているんだろう。
この手の作品を作る作家さんは本当に凄いと思う。
計算されているというか。
そして最終的には密接にクロスする物語。
伊坂ワールドでおなじみの泥棒、黒澤。
相変わらずクールでカッコいい!
こんな30代になれたらと思う。
泥棒稼業には憧れないけど。
全てを失った男が、全てを持つ男に勝利した事が爽快だった。
負け組が勝ち組を破る下克上。
買った本人はそんな自覚は一切ないのがイイ。
判官びいきという感情全開な感想だけど。
そう思わせる演出があっての事。
最終的には負け組男は超勝ち組になるんだけど。
物語のラストを飾る「希望」要素としては申し分ない。
他の人達の不幸量がハンパないだけに。
哀愁ただよう終わり方も悪くはないけれども、最後は気持良く〆て
欲しい。
現実世界もたくさんの人達が関わりあって成り立っているのは
言うまでも無いけれども、なかなかそれを意識する事は無い。
けれども人が存在するだけのストーリーが存在して、そのストーリーが
絡み合っているというのは凄い事だなと。
そう考えるとメンド臭いと思いがちな人間関係も少しは楽しめるはず。