- スマッシュ×スマッシュ! (徳間文庫)/松崎 洋
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試合中に怪我を負ったプロテニス選手の笠松勇太は、
傷が癒えても、以前の強い自分を取り戻せずにいた。
スポンサーは離れ、練習場所もなくなった。
そんなある日、東京の昭島市でテニススクールを開く校長が、
コーチになることを条件に、コートを貸してくれることになった。
ところが、問題を抱えているため、ほかの子供と一緒に練習ができない、
小学三年生の颯人の専属コーチとなり…。
「走れ!T校バスケット部」の著者が贈る感動のテニス・ストーリー。
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T校バスケ部もそうだったけど、シンプルな文体が印象的な松崎さん。
多少の物足りなさはあるものの、読みやすいのは○
颯人はアスペルガー症候群の子供。
聞いたことがある病名ではあったものの、詳しくは知らず
自閉症みたいなものだと思っていた。
実際には自閉症の子供よりも知能が高かったりするらしい。
更には歴史的な進歩を成し遂げた人達の中には、アスペルガー
障害の症状がみられる人達が大勢いるとの事。
うん、一つ勉強になった。
颯人は知能が高いため、周りの子供達と馴染むのが難しく、
パニックを起こす事が多かったが、勇太との、そしてテニスとの
出会いの中で目覚ましい成長を遂げる。
その成長ぶりが微笑ましかった。
パニックが起きそうなときに、必死にそれを抑える様子とか。
周りとの違いに特に敏感だと思われる日本の学校という環境の中で
颯人のような子供が、普通に生活するのが困難だというのは
想像に難くない。
だからそういう子供については、皆と同じ環境を強要するのでは
無く、その子に合った環境を用意してあげる事が親としては大事。
よーく覚えておこうと思う。
物語の大きなテーマとしては、勇太の再起。
ケガが原因で日本のトップレベルから転がり落ちてしまった勇太は、
颯人やクラブの仲間達との出会いによって、以前の輝きを
取り戻していく。
そんな勇太の復活と成長の描写も良かった。
スポーツものはこうでないと。
印象的だったのは常にチャレンジャーであるべきだという事。
過去の栄光にとらわれることなく、「負けたくない」ではなく
「勝ちたい」という積極的な心理で勝負に挑む事こそが、
テニスの試合の勝敗を分けるとの事。
決してテニスに限った話ではない。
勝負の世界では、勝利を貪欲に求める事が勝つための条件だと
思うし、守りに徹するよりもそちらの方が楽しめるはず。
こちらもよく覚えておこうと思う。
エピローグもしっかり書いてあって良かった。
勇太の海外ツアーでの活躍や颯人の難関校の受験など。
ケガが奇跡で治るのは、若干の違和感を感じてしまったけど
奇跡なら仕方ないな!
颯人はテニス続けてるんだろうけど、それについてもうちょっと
書いて欲しかったのが正直な気持ち。
吸収も早かったし、いいプレイヤーになるんだろうなぁ。
テニスは体育でやったことがある程度だけど、球の感覚が
好きだったなぁ。
またやってみようかなぁ。