- 正義のミカタ (集英社文庫)/本多 孝好
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僕、蓮見亮太18歳。
高校時代まで筋金入りのいじめられっ子。
一念発起して大学を受験し、やっと通称スカ大に合格。
晴れてキャンパスライフを満喫できるはずが、いじめの主犯まで
入学していた。
ひょんなことから「正義の味方研究部」に入部。
僕は、元いじめられっ子のプライドに賭けて、事件に関わっていく。
かっこ悪くたっていい、自分らしく生きたい。
そう願う、すべての人に贈る傑作青春小説。
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作品の魅力を一言で語るなら、正義の味方研究部の個性的なメンツと
主人公の「正義」との向き合い方。
正義の味方研究部は主人公の亮太を含め5名で構成されている。
亮太の親友であり、ボクシングのインターハイ3連覇のトモイチ。
イケメンでメガネの頭脳派、亘先輩。
肉体派かつ熱血な一馬先輩。
美女で活動派の優木姫先輩。
一見貫禄は無いが、正義への執念が物凄い部長。
その他に有事の際には、剣道部、空手部、サッカー部の部員が
臨時部員として加わる。
メンバー全員の個性がしっかりしていて、皆良いキャラしてる。
部長だけは最後の最後まで本気を見せないけどw
特にトモイチは亮太の同級生かつ親友であることから、出番も多い
かなりの良キャラ。
ボクシングの実力は言うまでもなく、喧嘩っ早いのは玉に傷なものの、
熱くてイイ奴だし、亮太との男の友情描写は素晴らしい。
こんな友達がいたら楽しいし、毎日が充実するだろうなぁ。
正義の味方研究部は、学校内で起こる様々なトラブルを解決している。
一言で言えば、治安維持活動かな?
具体的にはアルハラ対策やレイプ事件、サークルへの潜入調査、
図書館の本の盗難事件など。
それらの事件に関わっていく中で、亮太は正義とは何かを考える。
正義の味方研究部として振るう強者としての正義ではなく、
いじめられっ子の経験を活かし弱者と同じ立場に立って、
味方になってあげる事こそが、自分らしいやり方でないかと。
上記の事もあり、亮太は退部する事に。
退部に伴う部員全員との対決シーンが熱かった。
議論の対決でも拳と拳の対決でも、亮太の正義に対する想いが
伝わった。
行き過ぎた正義が間違う事だってあるだろうし、間違えた事で
傷ついた人にとっては、他のたくさんの善い行いなんて無意味な物。
だからこそ亮太は自分なりのかっこ良くないやり方を探すと言う。
例えば警察。
彼らは法的な立場から正義を守る為に働いているけれども、
そんな警察の行動によって傷ついた人もいるだろう。
そして傷ついた人の痛みは、傷つけた人が想像できない程
深かったりする物。
もちろん警察に助けられる人だって、たくさんいるんだけど。
そう考えると亮太の選択は、考え方としてアリだと思える。
勿論、警察という「正義のミカタ」も、もちろん必要不可欠なんだけど。
結局、自分らしい道を亮太は選ぶことができたのだと思う。
亮太はそれは正義では無いと考えているのだけど、それはそれで
別の形の正義だろう。
いわゆる「正義」とは違って、自分の中の価値観としての正義は
皆の心の中にあるもの。
それを守って生きていくのも、それなりに大変なものだとは思うけど。
対決後のトモイチと一馬先輩のケンカ。
友達、後輩への想いが伝わって来て感動。
本当に良い奴らだ。
最終的に部員が総幽霊部員化してしまって、部長は可哀そう…。
マジギレした際の亮太への暴力を考えると、ざまぁとも思えるけど、
それだけ「正義」に対する想いと、悪に対する憎しみが
強すぎたんだろう。
メンバー卒業後には再建できるだろうし、臨時部員もいるから
学内での正義の活動は縮小しながらも出来るんだろうけど。
それで守れない被害者がいる事を考えると、それはそれで
どうなんだろうなぁ…。
かっこ悪くても自分らしくか…。
そう簡単に出来る事では無いけれども、自分らしく生きていければ
後悔の少ない時が過ごせると思うし、心にとめておこう。