- MOMENT (集英社文庫)/本多 孝好
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死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら…。
病院でバイトをする大学生の「僕」。
ある末期患者の願いを叶えた事から、彼の元には患者たちの最後の願いが
寄せられるようになる。
恋心、家族への愛、死に対する恐怖、そして癒えることのない深い悲しみ。
願いに込められた命の真実に彼の心は揺れ動く。
ひとは人生の終わりに誰を想い、何を願うのか。
そこにある小さいけれど確かな希望―。
静かに胸を打つ物語。
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あらすじを読むとイイ話系の物語かなと思えるんだけど、実際読んでみると
意外にドロドロしていて、ある意味リアルなお話。
物語は全4章で構成されていて、それぞれの患者の最後の願いを主人公が
叶えるべく奮起する。
最後の章の患者である有馬と主人公のやり取りはなかなか良かった。
有馬の最後の願いは家族に遺産を残すため早く死ぬ事。
色々あってそれを阻止する場面。
有馬は死を望む人には、その望み通りに死なせてやるべきと言う。
そしてそれを止める権利は主人公には無いと。
主人公はそれに対して、生きていれば周りの人間の自分に対する好意、
悪意、善意、害意が生まれ、そんな感情はその人が生きていたことにも
責任の一端がある。
自分勝手な事情で死にたいなら関わったすべての人の同意を
取り付けるべき…と無茶苦茶な理屈(主人公も自覚してるしw)。
確かに無茶苦茶だけど、有馬に死んで欲しくないという主人公の想いが
伝わってくるやり取りだった。
そして死ぬ瞬間、人は何を考えるのか?という問いに死ぬ時になれば
嫌でもわかると言う。
まぁ、そうなんだろうけどw
僕がその時を迎える時、何を考えるかはやはり分からない事ではあるけど、
少しでも後悔する思いが少なくなるように生きていきたい。