- ひとりぼっちの王様とサイドスローのお姫様 (メディアワークス文庫)/柏葉 空十郎
- ¥704
- Amazon.co.jp
彼女には幼馴染みの巧也と野球をするという目的があった。
そう、甲子園を目指すのだ!
中学時代、巧也はシニ アの世界で活躍し、全国区の有名選手に成長していた。
だが、再会に胸躍らせる綾音の目の前にいたのは、想像していたのとは全く違う巧也だった。
冷淡に「野 球はやめた」と言い捨てる巧也に戸惑いを隠せない綾音。
彼女は巧也に野球をやらせるべく猛アタックを始めるのだが―。
爽快な野球小説の登場。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
う~ん、面白かった。
2人が所属する高校は公立の進学校で、野球部員は10名のみ(1人を除いて全員1年生)という
ある意味ありがちでお約束な設定。
なのでストーリーとしての目新しさはあまり無いんだけど、細かな野球のプレーの描写と
登場人物が魅力的。
僕自身は本格的な野球は未経験だけど、観戦するのは好きだからそれに十分な知識は
あるつもりだったけど、本作を読んで更に観戦を楽しむための知識が付いたように思う。
逆に野球のルールがさっぱりだったり、野球が好きで無い人には不向きな作品かな…。
まぁ、そんな人はこの本を手に取ることはないだろうけど。
主役の2人が魅力的だったのはもちろん、脇を飾る山葉(脇というよりは主役級の活躍だけど)、
岩崎が良かった。
山葉は中学まで陸上部だった野球初心者であるものの、Max156㎞/hの剛球と一発のあるパンチ力、
俊足を兼ね備える規格外の天才プレイヤー。
野球エリートである巧也も、彼の才能を前にして涙目になったほどw
それだけの才能を持ちながら、人物的には嫌味と表裏の無い愛され(おバカ?)キャラという…。
そんな彼は試合でも大暴れ!
活躍シーンでは爽快過ぎてニヤリとしてしまったw
岩崎は唯一の2年生であり、人望のある努力の人。
彼が控えに徹する決意をして1人涙するシーンや、試合中のあきらめムードのナインを
一喝するシーンでは思わず胸が熱くなった…。
ページ数は500を超える厚みのある本なんだけど、試合が1試合だったのがちょっとだけ
物足りない感じ。
その分、その1試合が丁寧に描かれているけれど。
彼らは1年生中心のチームだから、この話の後も成長し続けて、甲子園を目指すんだろうなぁと。
山葉が成長してさらに超人化し、期待の新入生とかも入部して…とか考えているとちょっと楽しい。
公立の進学校が甲子園優勝っていうと、創作の世界の話のようでいて佐賀北高校の例もあるし、
可能性としてはあるんだよなぁ。
ある意味「所詮フィクション」とならない訳だから、世の中の作家さん達はどんどんフィクション作品を
書いていただきたいなぁと思う。