第69回 代表曲と売れた曲は一致するのか
キャンディーズ
私に物心がついた頃に登場して活躍しだした3人組アイドル。人気絶頂期に解散したことは、当時社会的な話題にもなったのも覚えています。70年代に活躍した方たちなので、一旦スルーしたのですが、思い直して取り上げることにしました。というのも、アイドル歌手の場合、デビュー時の一番売上が高くて、以降失速していくというパターンはわりと多いのですが、尻上がりに売上を伸ばしていって、最後の一番売上が大きいという、極めて稀な上り坂タイプの売上推移グラフであるからです。ということで、売上の変遷と代表曲をみてみることにします。
【ヒットに恵まれないデビュー直後】 1973~1974年
「あなたに夢中」「そよ風のくちづけ」「危ない土曜日」「なみだの季節」
デビュー直後から売れたわけではなく、最初の2年間はヒットに恵まれない時期が続きました。この時期のセンターポジションは田中好子(スー)が務めていましたが、テレビなどでそこそこ露出はあったものの、あまり売れなかったです。
【ついにヒットが出て人気者に】 1974年
「年下の男の子」「内気なあいつ」「その気にさせないで」
「ハートのエースが出てこない」
5thシングル「年下の男の子」ではセンターを伊藤蘭(ラン)にチェンジしたところ、キャッチーで明るい曲調と相まって、初めてのヒット。オリコンのチャートも9位まで上がりました。そこから3曲はトップ10には入らなかったものの、いずれも20位内をキープ、売上のアベレージも上がってきて、次第に人気が広がっています。当時私の同い年のいとこの家に、「ハートのエースが出てこない」のレコードがあるのを見つけ、当時の私が持っているレコードといえば、正義の味方の主題歌とかそういうものばっかりだったので、彼女がちょっと大人に見えて、なんとなく悔しかったのを憶えています。
【さらにヒット連発でトップアイドルに】 1976~1977年
「春一番」「夏が来た!」「ハート泥棒」
「哀愁のシンフォニー」「やさしい悪魔」「暑中お見舞い申し上げます」
そして1976年になってリリースした「春一番」が大ヒットとなり、オリコン3位にまで到達。これ以降は出す曲がほぼヒットで、トップアイドルとしてひっぱりだこになりました。「やさしい悪魔」は吉田拓郎が作曲と、話題性にも事欠かず、ソロアイドル全盛の中で、貴重な3人組のアイドルグループとして、芸能界を席巻したといっても過言ではないでしょう。
【解散へのカウントダウン】 1977~1978年
「アン・ドゥ・トロワ」「わな」「微笑がえし」
ところがそんな人気絶頂の中で、突然の解散引退宣言をしたから、世の中は大騒ぎ。「普通の女の子に戻りたい」は流行語にもなりました。しかし解散を発表した後もレコードセールスは好調で、実質最後のシングルとなった「微笑がえし」ではついにオリコン1位を獲得。売上枚数的にもそれまでの最高の2倍を超える圧倒的な実績を残したのです。単にラストソングというわけだけでなく、歌詞にそれまでのヒット曲のタイトルが散りばめられた粋な計らいで、作品としても3人の集大成的なものになったというのも大きかったのではないでしょうか。また1つ前の「わな」では藤村美樹(ミキ)が初めてセンターを務めたというのも話題になりました。
■売上枚数 ベスト5
1 微笑がえし 82.9万枚
2 わな 39.2万枚
3 やさしい悪魔 39.0万枚
4 春一番 36.2万枚
5 暑中お見舞い申し上げます 29.8万枚
1位は圧倒的ですが、2位以下は小差での競り合いになっています。
■最高順位
1位 … 微笑がえし
3位 … 春一番、わな
4位 … やさしい悪魔
最後の最後で1位を獲得した「微笑がえし」に続き、3位は2曲で獲得。1980年代とは違って、トップアイドルでも首位を獲得するのは容易ではなかった時代ですから、3位というのも大健闘ではあります。
■代表曲
1 年下の男の子
春一番
微笑がえし
4 ハートのエースが出てこない
暑中お見舞い申し上げます
やさしい悪魔
わな
活動期間のわりに知られた代表曲が割と多くて、その中で2グループに分けてみました。1位の3曲はなかなか順位付けが難しく、初のヒット曲「年下の男の子」、人気が一気に上昇した「春一番」、そしてラストの「微笑がえし」とそれぞれの時期でポイントとなる曲で、単に売上だけで比較するのが難しいですね
■好きな曲 ベスト5
1 わな
2 アン・ドゥ・トロワ
3 哀愁のシンフォニー
4 やさしい悪魔
5 微笑がえし
この5曲はどれも大好きな曲です。子供ごころに好きなのは実はミキちゃんだった私、そのミキちゃんがセンターで歌った「わな」はそれまでにない大人っぽくてスリリングな曲で、今でも気に入っています。吉田拓郎の作った「アン・ドゥ・トロワ」「やさしい悪魔」も当時のアイドルソングとしてはかなり洒落ていますし、「哀愁のシンフォニー」
のメロディーの美しさも捨てがたいものがあって、作品としていずれも力が入っていたことがうかがえます。
「年下の男の子」「春一番」「微笑がえし」はいずれも前後の曲と比べると売上も突出しているのですが、売上アベレージが、前期、中期、後期と上がってきている中での横一列の比較になるので、ランキングにすると、アベレージの高かった後半のシングル曲が上位に入ってきやすくなるというのはあるのですね。
結論:代表曲は売上と連動はしているが、売上が高い順に代表曲としての位置づけも並んでいるかといわれると、必ずしもそうではない