第38回 代表曲と売れた曲は一致するのか

小沢健二

 

小山田圭吾とのフリッパーズギターを経てソロデビューしたオザケン。東大出身という頭脳に、血統の良さ、そして育ちのよさそうなルックスとキャラクターで、いわゆる渋谷系シーンのトップをけん引していきました。主に1990年代の半ばをピークとして活躍後、長い間鳴りを潜めていましたが、2017年に復活を果たしています。

 

【出発】 1993年

「天気読み」「暗闇から手を伸ばせ」

フリッパーズギターとしては「恋とマシンガン」のヒットがあり、ある程度の知名度を持ってのデビューということで、ソロデビュー曲は最高17位のスタートとなりました。この時点ではまだまだコアな音楽ファンが聴いているというイメージはあり、続く「暗闇から手を伸ばせ」は66位止まりでした。

 

【飛躍】  1994年

「今夜はブギー・バック」「愛し愛されて生きるのさ」「ラブリー」

スチャダラパーとのコラボによる「今夜はブギー・バック」が20万枚を超えるヒットと、いよいよ小沢健二の名前が一般の人たちにも届きだしたのがこの年。リリースした3曲がいずれもトップ20以内に入り、すべてが10万枚超えとなり、そしてうち2枚が20万枚超えと、セールス面でも音楽シーンにおける渋谷系を引っ張っていくことになりました。

 

【爆発】  1995年

「カローラⅡにのって」「強い気持ち・強い愛」「ドアをノックするのは誰だ?」

「戦場のボーイズ・ライフ」「さよならなんて云えないよ」「痛快ウキウキ通り」

そして迎えた1995年、テレビのCMソングに起用された「カローラⅡにのって」が初めてのトップ10入りで2位を獲得すると、売上枚数も80万枚となり、一気に大爆発。1年になんと6曲もシングルをリリースして、うち5曲がトップ10入り、すべてが10万枚超えの売上となりました。年末には紅白歌合戦にも出場と、アーティスト人生のピークを過ごしていたといえるでしょう。

 

【下降】  1996年

「ぼくらが旅に出る理由」「大人になれば」「夢が夢なら」

しかし前年までの盛況ぶりから、たった1年で大きく状況が変わってきます。「大人になれば」こそ7位になっていますが、枚数的にはいずれも10万枚に届かず、渋谷系の音楽がそろそろ飽きられてきたようなところが出てきたのかもしれません。それでも年末には2回目の紅白に出場と、まだまだ存在感としては目立ったところはありました。

 

【苦悩】  1997~1998年

「Buddy」「指さえも」「ある光」「春にして君を想う」

勝手に「苦悩」なんてしましたが、やはり以前のようにヒット戦線の最前線に戻ることは難しいのか、一度下へ向かった流れを再び逆にともがき苦しんでいるような時期だったのかもしれません。そしてこれがその後の休止状態につながっていくことになります。

 

 

■売上枚数 ベスト5   

1 カローラⅡにのって 82.1万枚

2 強い気持ち・強い愛/それはちょっと 37.8万枚

3 痛快ウキウキ通り 27.8万枚

4 今夜はブギー・バック 22.5万枚

5 ラブリー 22.3万枚

 

圧倒的に枚数が多いのは「カローラⅡにのって」ですが、そもそもがCMのために作られた曲で、シングル化するつもりもなかった曲ということ。CMで好評につき、シングルとして販売したら自身最大のヒットになったということですから、なんとも皮肉。その次が「強い気持ち・強い愛」でこちらはカップリングの「それはちょっと」もテレビドラマのテーマソングということでかなり強力な組み合わせ。初期の「今夜はブギー・バック」「ラブリー」も順位以上に健闘しています。

 

■最高順位 

2位 … カローラⅡにのって、流動体について  

4位 … 強い気持ち・強い愛、 痛快ウキウキ通り

最高は2位の2作品ですが、ここでも「カローラⅡにのって」が優勢です。もう一曲は復活後の「流動体」について。こちらは時代が違って、音楽を取り巻く環境がだいぶ違うので、単純比較は難しいところ。

 

 

■代表曲

1 今夜はブギー・バック

  ラブリー

  強い気持ち・強い愛

絶対的な1曲というのがなかなか難しいのですが、3曲選ぶとすると、ブレイクきっかけの「今夜はブギー・バック」、紅白で歌唱した「ラブリー」、のちに映画のタイトルに使われた「強い気持ち・強い愛」になるのではないでしょうか。このほか「僕らが旅に出る理由」あたりを上げる人もいそう。

 

 

■好きな曲 ベスト5

1 戦場のボーイズ・ライフ

2 さよならなんて云えないよ

3 それはちょっと

個人的には1995年の頃の作品が好きで、中でも「戦場のボーイズ・ライフ」は特に気に入っていますが、そこそこ売れたにも関わらず、いまいち目立たない存在というのが残念なのですよね。

 

 

一番売れたのは枚数的にも順位的にも「カローラⅡにのって」なのですが、企画物色が超濃厚なこの作品が代表曲として語られることはほとんどありません。

結論:代表曲にはなり得ない曲が一番売れてしまったという…