第32回 代表曲と売れた曲は一致するのか
大黒摩季
1990年代半ばを中心にヒットチャートを席巻した力強いボーカルで大ヒットを連発した大黒摩季。ヒットを連発していた当時はメディアへの露出も控えめで、謎めいたところもありましたが、現在ではたびたびテレビでもかつてのヒット曲を歌ってくれています。タイプとしてあまり他に類似する女性歌手がいなくて、等身大の女性の本音を歌った独特の歌詞でOLを中心に共感を呼び、CD景気もあってミリオンセラーも3曲残しています。
【タイアップ絡みでいきなりの快進撃(TM FACORY時代)】 1992~1993年
「STOP MOTION」「DA・KA・RA」「チョット」
「別れましょう私から消えましょうあなたから」「Harlem Night」
デビュー曲「STOP MOTION」がドラマの主題歌に起用されると、2ndシングル「DA・KA・RA」がマルちゃんのCMソングとなり大ヒット、ミリオンセラーを達成。そしてここから織田哲郎作曲「チョット」、この時期ちょっと流行った長いタイトルの「別れましょう私から消えましょうあなたから」、そして「Harlem Night」といずれもテレビ番組のタイアップがついてヒットし、まさに快進撃が始まったのでした。
【独身OLの代弁者として大ヒット連発】 1993~1995年
「あなただけ見つめてる」「白いGradation」「夏が来る」
「永遠の夢に向かって」「ら・ら・ら」「いちばん近くにいてね」
さらに快進撃は続き、「あなただけ見つめてる」「ら・ら・ら」の2曲がミリオンセラーを達成。「永遠の夢に向かって」で初めてのシングルチャート1位も獲得と、とにかく出せば売れるの好循環。「あなただけ見つめてる」では涙ぐましい努力により自分を捨ててまで恋人好みの女になろうとする女性を、「白いGradation」では恋人に対して猜疑心の塊となっていることに初めてきづいて別れた後で反省する女性を、「夏が来る」ではいくつになっても王子様が現れてくれることに期待している女性をそれぞれ歌うなど、等身大の独身女性の本音を歌詞にすることで、同年代の女性の共感を呼び、まさに独身OLの姉御的な存在として、その地位を確立することになりました。
【あで始まるタイトル連発の安定期】 1997~1999年
「愛してます」「あぁ」「熱くなれ」「アンバランス」
変な形でまとめてしまいましたが、“あ”で始まるタイトルが4連続していることがどうも気になっていて、そうまとめさせていただきました。この中では特に「熱くなれ」はNHKの五輪放送テーマになり、連日流れたこともあって3回目の1位を獲得。チャートの上位必ず顔を出し、セールス的も引き続き安定していましたが、若干最盛期の勢いと比べると、陰りが見えてきたような印象もありました。
【セールスは下降トレンドに】 1997~1999年
「ゲンキダシテ」「空」「ネッ!~女、情熱~」
「太陽の国へ行こうよ すぐに~空飛ぶ夢に乗って~」「夢なら醒めてよ」
1位2位を連発していた大黒摩季も、この頃になると次第に売上、順位を落としていきます。結果的に1999年の「夢なら醒めてよ」を境に、シングルチャートのトップ10からは長い間遠ざかっていくことになりました。
【公私とも新たな展開へ】 2001年~
「虹ヲコエテ」「雪が降るまえに」「アイデンティティ」
「Anything Goes!」「Lie, Lie, Lie,」など
21世紀に入るとさすがにヒット戦線の最前線からは退くことになりますが、結婚や離婚、病気による活動休止など、プレイベートの方が波乱万丈な動きを見せていきます。それと併せてテレビへ対応に変化が見られるようになります。ヒット曲を連発していた時期はかなりテレビへの出演を抑えていたのですが、逆にヒットが出ないようになってから、かつてのヒット曲を番組で歌ったりすることが増えてきたように感じます。戦略もあったのでしょうが、最近の方が親しみを持てますよね。そしてさらに女優デビューを果たすなど、その活動の幅をさらに広げているようです。
■売上枚数 ベスト5
1 ら・ら・ら 133.9万枚
2 あなただけ見つめてる 123.6万枚
3 DA・KA・RA 105.5万枚
4 夏が来る 97.1万枚
5 いちばん近くにいてね 86.7万枚
CDがバカ売れした時代ではありますが、ミリオンセラー曲が3つあるというのは凄いことです。しかもその3曲が連続せずに1992年、1993年、1995年と散らばっているのがまた特筆もの。勢いとパワーで瞬間的に売ったのではなく、売れる作品をコンスタントに作り出すことにも長けていたということでしょう。その中でもドラマの主題歌として起用された「ら・ら・ら」はキャリア最大の売上を残しました。
■最高順位
1位 … 永遠の夢に向かって、ら・ら・ら、熱くなれ
2位 … DA・KA・RA、あなただけ見つめてる、夏が来る、
いちばん近くにいてね、愛してます、あぁ
1位が3曲、2位が6曲と常に最上位にランクインした印象ですが、初めて1位を獲得したのが9枚目の「永遠の夢に向かって」というのがちょっと意外な感はあります。さらに「ら・ら・ら」はやっぱりという感じですが、他の2曲が「永遠の夢に向かって」「熱くなれ」というのも、あれ、ほかの曲じゃないの?という感覚はありますね。この時代は前述のようにCDが売れまくっていましたので、より以上に強力な作品に阻まれて、1位を阻止されていたのでしょう。
■代表曲
1 ら・ら・ら
2 夏が来る
3 あなただけ見つめてる
4 熱くなれ
5 チョット
これだけヒット曲があると迷ってしまうのですが、私のイメージとしてはこんな感じでしょうか。おそらく「ら・ら・ら」は固いように思います。大黒摩季の紹介で流れる曲はまず「ら・ら・ら」のことが多いですからね。「夏が来る」「あなだたけ見つめてる」はいかにも大黒摩季らしい作品だと思いますし、「熱くなれ」はオリンピックの時にさんざん聴いたということがありますからね。
■好きな曲 ベスト5
1 白いGradation
2 チョット
3 別れましょう私から消えましょうあなたから
4 愛してます
5 あなただけ見つめてる
個人的な好みで並べるとだいたいこんな感じ。大きな売上の2曲に阻まれて目立ちませんが、「白いGradation」の切なさと吹っ切れた感とが共存しているところが聴いていて心地よくて好きなのですよね。「チョット」はさすがのヒットメーカー織田哲郎メロディーといったところ。「別れましょう私から消えましょうあなたから」の斜に構えた感じも「愛してます」のストレートさも好きです。
高レベルでの売上枚数争いの中、最大セールスの「ら・ら・ら」が一番の代表曲。ただ2番手、3番手となると、必ずしも売上枚数の順番通りという感じでもなさそうで、ミリオン達成の「DA・KA・RA」よりも、売上4位の「夏が来る」の方が、代表感はありますよね。
結論:代表1曲のみを選ぶとすると売上の順番と一致といっていいでしょう。2番手以降はやや微妙か。