第21回 代表曲と売れた曲は一致するのか

 

岩崎良美

さてお姉さんに続いては妹さんを取り上げます。誰もが知る代表曲には“あの歌”がありますが、果たしてセールスの実績面ではどうだったのでしょうか。

 

【岩崎宏美の妹としてデビュー、歌唱力をアピールして新人賞争い】  1980年

「赤と黒」「涼風」「あなた色のマノン」「I THINK SO」

先にデビューしてトップアイドルとして活躍を続けていた岩崎宏美を追ってデビュー。岩崎宏美の妹というだけで注目をされ、知名度という点では最初からアドバンテージがあったことは確かです。ただお姉さんの存在が大きすぎて、容姿でも歌唱力でも比べられるのはプレッシャーでもあったでしょう。それでも各テレビ局の新人賞レースには必ず顔を出し、紅白歌合戦にも出場と、恩恵も間違いなく受けていたでしょう。この年に出したシングルはそれぞれ20位前後、10万枚強と、健闘はしていますが、大ヒットにはもう一歩という状況ではありました。

 

【王道路線で邁進するもセールスは伸び悩み】  1981~1982年

「四季」「LA WOMAN」「ごめんねDarling」「愛してモナムール」

「どきどき旅行」「マルガリータ ガール/Vacance」

2年目に入ると、セールス的には10万枚に届かなくなり、順位的にも30~40位台ということが多くなります。宏美の妹だけあって歌唱力は文句ないのですが、下手にそれがあるばかりに、しっかりとした歌謡曲を歌わせられることが多くかったことが、セールス的には損をしていたかもしれません。100%純なアイドルという感じでもなかったので、どこをターゲットにするのかが難しかったようには思います。この時期は南佳孝、尾崎亜美、加藤和彦、パンタといった作家陣の作品を歌っていました。

 

【優雅でおしゃれな路線で独自の道を開拓】  1982~1983年

「化粧なんて似合わない」「恋ほど素敵なショーはない」

「ラストダンスには早過ぎる」「月の浜辺」「オシャレにKiss me」

1982年の終盤にリリースした「化粧なんて似合わない」あたりから、曲の雰囲気が変わってきて、当時でいうニューミュージック的な雰囲気が強くなっていきます。タイトルも凝ったものになっていますが、どこか優雅でおしゃれなムードをまとった歌唱で、独自の路線を開拓していっているようなそんな印象さえありました。セールス的にはあまり恵まれませんでしたが、特に作詞に売野雅勇または尾崎亜美を起用し、シンガーとしてこっちの方向へ進んでいきたいのだろうというそんな主張のようにも思えました。

 

【歌謡曲路線への回帰】  1984年

「プリテンダー」「愛はどこに行ったの」「くちびるからサスペンス」

「ヨコハマHeadlight」

しかしながらその路線も結局は売れず、1984年は再び歌謡曲路線に戻り、方向性を模索していくのですが、セールス面ではじり貧で、もはやここまでかという雰囲気さえ漂い始めたころでもあります。「愛はどこに行ったの」「くちびるからサスペンス」「ヨコハマHeadlight」と3曲続けて当時売出し中の作曲家林哲司に依頼するも、正直なところ“不発”に終わってしまいました。

 

【芹澤廣明とのタッグ&アニメ「タッチ」専属で見事に復活、そして活動休止へ】  1985~1989年

「タッチ」「愛がひとりぼっち/青春」「チェッ!チェッ!チェッ!」

「情熱物語」他

そんな低迷状態にいた岩崎宏美が、突如再び輝きを取り戻すことになったのが、20枚目のシングル「タッチ」でした。この曲は人気テレビアニメ「タッチ」のテーマソングでもあり、芹澤廣明を作曲に起用するとこれがヒット。そして続く「愛がひとりぼっち」「チェッ!チェッ!チェッ!」「情熱物語」と4曲続けて「タッチ」のテーマ曲でまさに「タッチ」専属歌手的な状況、そして作曲芹澤廣明ということで、セールスも復調。さらに「愛がひとりぼっち」のB面「青春」がセンバツ高校野球の行進曲にも起用され、停滞していたキャリアがまた一花咲かすことになったのです。ただそこから程なく、一旦歌手活動を休止し、演じる仕事が主軸になっていくことになりました。

 

【歌手活動の再開】 1998年~

その後は再び歌手活動に戻ってくるのですが、すでにヒット歌手としての役割は終え、のんびりマイペースでの活動という形になってきます。今でも時々テレビの昔の歌を紹介する特集などで、「タッチ」を歌ったりするのを見ることがありますね。

 

 

■売上枚数 ベスト5   

1 タッチ 24.7万枚

2 愛がひとりぼっち 16.0万枚

3 涼風 15.7万枚

4 赤と黒 11.6万枚

5 I THINK SO 11.1万枚

 

ベスト5に入っているのが、タッチのテーマソング2曲と、デビュー初年度にリリースされた3曲ということで、歌手岩崎良美の好調期が非常にわかりやすい結果となっています。

 

■最高順位 

10位 … 愛がひとりぼっち 

12位 … タッチ

15位 … チェッ!チェッ!チェッ!

 

この3曲はいずれもアニメ「タッチ」のテーマソングということで、唯一シングルチャートのトップ10入りしたのが「愛がひとりぼっち」だったのですね。一方でシングル曲「タッチ」はトップ10に入っていないのですよね、実は。

 

 

■代表曲

1 タッチ

------------ 壁

2 青春

 

圧倒的に「タッチ」で、この曲だけは若い人も知っているでしょう。まさか「タッチ」が残っていく曲だとは思わなかったのですが、覚えやすくてキャッチーなので、一度聴いたら忘れにくいということもあるのでしょうか。圧倒的に「タッチ」なのですが、その次がセンバツ行進曲「青春」で、この曲を懐メロ番組で歌ったのを聴いたことがあります。「タッチ」じゃなければこの曲なのかと思ったのを覚えています。ただこの曲は、両A面の2番目的な位置なので、

“敢えて選べば”という感じですかね

 

■好きな曲 ベスト5

1 恋ほど素敵なショーはない

2 プリテンダー

3 ラストダンスには早過ぎる

4 涼風

5 あなた色のマノン

 

個人的には1984~1985年ごろの曲が好きなので、このあたりの曲にもう一度スポットが当たったりすると嬉しいのですが、まあないでしょうね。「あなた色のマノン」は賞レースでよく聴いた覚えがあります。

 

「タッチ」が一番の代表曲で間違いないですし、一番売れたのもこの曲。ただ、チャートのトップ10に入っていないというのが意外でもあるし、その点で「愛がひとりぼっち」に負けているというのも、すっきりとしないところではあります。

結論:一番の代表曲は一番売れた曲で違いはないのですが、一番高い順位までいったシングルではない