第5回 代表曲と売れた曲は一致するのか

 

アン・ルイス

 

アイドル的な存在から女性ロックシンガーの先鋒的存在に変貌を遂げ、セールスの実績以上に強い印象を残してきたアーティストです。一時期はカラオケでも定番の曲としてよく歌われもしましたね。

 

 

【ハーフのアイドルとしての売出し期】  1971年~1974年

「白い週末」「わかりません」「グッド・バイ・マイ・ラブ」「ハネムーン・イン・ハワイ」など

ハーフというだけで目立つ当時の日本、その中でアイドル的な戦略でまずは売出しをかけます。しばらくはオリコントップ100に入ったり入らなかったりと、パッとしない感じでしたが、6th「グッド・バイ・マイ・ラブ」がスマッシュヒット。のちに他のアーティストにカバーされたりと、歌い継がれることになる佳曲なのですが、オリコン14位で20万以上の売上を残し、アン・ルイスの名前が広がる最初のきっかけになりました。

 

【売上伸び悩み期】  1975年~1976年

「恋のおもかげ」「ラスト・シーン」「ごめんなさい」「ラスト コンサート」

ところが好調な動きは1曲のみで終わってしまい、9thから13rdまでは再びトップ100圏外と、まったくもって売れ行きが振るわない状態に陥ってしまいます。アイドル的な売出しでは限界にきていたのでしょう。

 

【アイドルからアーティストへの転換期】 1977年~1980年

「女はそれを我慢できない」「女にスジは通らない」「恋のブギ・ウギ・トレイン」「リンダ」 

そこでややアーティスト色の強い楽曲へと戦略を変えてきます。それまで作曲家としてよく起用していた平尾昌晃から離れ、松任谷由実、加瀬邦彦、山下達郎、竹内まりやといった作曲家と組むようになっていくのですが、そんな中で「女はそれを我慢できない」が自己最高12位を記録します。その後もトップ100圏内をキープするようになり、アーティストとしての足固めが進んでいくことになります。

 

【女性ロッカーとしての地位の開拓期】  1982年~1987年

「ラ・セゾン」「LUV-YA」「I Love Youより愛してる」「六本木心中」「あゝ無情」

「天使よ故郷を見よ」など

さらにロック色の強い作品で攻めだしたのがこの時期で、派手なファッションやメイクで印象も強くなり、日本のメジャーシーンにおける女性ロッカーの先導者的な立ち位置で見られることが多くなってきます。作詞が山口(三浦)百恵、作曲が沢田研二という「ラ・セゾン」は話題を呼び、初のトップ10入りのヒット。続いて後にカラオケの定番曲となる「六本木心中」「あゝ無情」などの印象的な曲を次々に発表し、アーティストとしての地位を完全に確立させました。

 

【貫禄のロッカー期】 1988年~1993年

「KATANA」「美人薄命」「WOMAN」「欲望」 など

この頃は必ずしも大ヒットには結びつかなくても、女性ロッカーの重鎮的な存在として君臨し、コンスタントに作品を送り続けます。いかにもアン・ルイスらしい印象的な作品が並び、「WOMAN」なども売上以上に愛され続ける楽曲になっています。

 

【ヒットチャートからの後退期、そして活動休止へ】 1994年~

「MIDNIGHT SUN」「I‘M IN LOVE」「WOMAN RHYTHM」など

ただどんな歌手にも山があれば谷も生じるわけで、次第にヒット―チャートの上位から遠ざかっていくようになり、心身の不調により、活動を休止することにもなってしまいました。

 

■売上枚数 ベスト5   

1 ラ・セゾン 35.4万枚

2 六本木心中 29.6 万枚

3 女はそれを我慢できない 25.4万枚

4 グッド・バイ・マイ・ラブ 23.8万枚

5 LUV-YA 11.1万枚

「ラ・セゾン」と「LUV-YA」が繋がっているだけで、あとはまったく発売時期が離れています。うまく楽曲がはまれば売れるし、そうでなければ売れない、アーティストパワーだけでセールスをあげられるような感じではありませんでしたが、その時その時で楽曲と巡り会って、タイプの異なる作品でヒットを出していったということは、成長や時代に合わせて変えていくことができたからでしょう。

 

■最高順位 

3位 … ラ・セゾン

実はトップ10入りした作品はこれ1曲のみ。一気に勢いで売るというよりは、じわじわと長期にわたって売れ続けるタイプの曲が多かったということでしょうね。

 

■代表曲

1 六本木心中

2 あゝ無情

3 グッド・バイ・マイ・ラブ

4 WOMAN

5 ラ・セゾン、女はそれを我慢できない

1位、2位あたりはカラオケで盛り上がるということで、そこから広がったという印象はあります。2位、4位あたりはセールス的にはあまり奮わなかったのですが、アン・ルイスの代表曲としては強い印象です。逆に一番売れた「ラ・セゾン」なんかは、代表曲の1番手、2番手にはなりそうもなくて、発売時に売れた作品と、あとまで残っていく作品はちょっと違うということなのです。

 

■好きな曲 ベスト5

1 LUV-YA

2 女はそれを我慢できない

3 恋のブギ・ウギ・トレイン

4 六本木心中

5 天使よ故郷を見よ

こんな感じです。

 

一番売れた「ラ・セゾン」よりも、「六本木心中」の方が代表曲らしいか、さらにさほど売れていない中でも「あゝ無情」「WOMAN」「グッド・バイ・マイ・ラブ」などの歌い継がれている代表曲多し。

結論:一番売れた曲は代表曲としては1番手2番手にはならなそう。