80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.364

 

Yes・No オフコース

作詞 小田和正

作曲 小田和正

編曲 オフコース

発売 1980年6月

 

 

『さよなら』に続く大ヒットでオフコースの人気と地位を確実なものにしたせつないメロディーが心に響くラブソング

 

 オフコースのシングルデビューは1970年の『群衆の中で』でしたが、初めての大ヒットとなったのが1979年12月発売の『さよなら』で、それまでの一般的には認知の薄い期間が10年近くありました。その間にはのちに西城秀樹がカバーした『眠れぬ夜』(1975年12月)や、もう少しで10万枚というスマッシュヒットとなった『愛を止めないで』(1979年1月)など、のちの代表曲になるような楽曲もあったのですが、オリコンのシングルチャートではベスト30にも入ることはありませんでした。そこにきての『さよなら』だったのですが、これがオリコン最高2位、売上71.7万枚ということで、オフコースは一気にメジャーな存在に躍り出たわけです。では、その勢いのあるうちに、次のヒット曲を出すことで、確固たる地位を確立させようじゃないかと放ったのが『Yes・No』でした。

 

 『Yes・No』、これはかなり力が入っているなと一聴で思わせるような、売れ線狙いのメロディーとアレンジの作品で、それまでのオフコースのイメージから少しはみ出して攻めに出たような印象はありました。もともと素朴でアコースティックな曲から始まり、少しずつ色がついてきたようなところがオアコースにはありましたが、『さよなら』も含めて、まだイメージとしてはそっちよりのようなところがありました。ただこの『Yes・No』はドラマティックなメロディーと、それまでよりもやや重厚感のある音で、ポップスとかロックとか、そちらの方面に足を踏み入れたような、そんなイメージなのですよね。こんな引き出しも持っているのだよとアピールするような、新しい一面を見た思いがしました。のちに小田和正のソロ曲として大ヒットした『ラブ・ストーリーは突然に』をオーダーされるときに、『Yes・No』のような曲をというのが条件だったと聞いたことがあります。確かに曲の雰囲気としては似たようなものがありますね。この『Yes・No』によって、聴き手がオフコースに期待する曲調の幅のようなものが広がったのではないでしょうか。

 

歌詞はというと、とにかく目の前にいる「君」への熱烈ともいえる恋慕の思いを何度も何度も語り掛けている、そんな畳みかける問いかけが印象的な内容になっています。

《好きな人はいるの?》

《君を抱いていいの?》

《好きになってもいいの?》

《心は今何処にあるの?》

《何も聞かないで 何も何も見ないで》

《君を哀しませるもの 何も何も見ないで》

季節は夏の終わり、涼しくなりかけたころ。二人はその日ともに時を過ごし、別れの時間。夏の追われと今日の終わり、二つが重なってより寂しさと切なさを増幅させているのでしょうか。

《今日はありがとう 明日会えるね》

という言葉から、同僚とか同級生とか、毎日会うような関係性の相手に対し、デートにでも誘って、応じてくれたという状況でしょうか。好きな人がいるか尋ねている状態なので、恋人同士にはなっていないでしょう。相手が自分のことをどう思っているのか、考えれば考えるほど《君のことばかり気になる》という、まさに恋の初めの心情なのでしょう。そしてそんな数々の問いかけをしている歌詞に対するタイトルが『Yes・No』ということで、このあたりはなかなか心憎いです。歌詞の中には1回も出てこない言葉を持ってきているのです。「好きな人はいるの?」に対しYesかNoか、「好きになってもいいの?」に対しYesかNoか、「君を抱いていいの?」に対しに対しYeeかNoか、どっちなの?ともんもんと考えているもどかしさを実にうまく表していると思いませんか?

 

 結果として『Yes・No』はオリコン最高8位、35.4万枚というオフコースにとって、2番目にヒットした曲となったわけで、このあと解散まで、名曲を多く送り出しながら、ビッグバンドの道をたどっていくことになるわけです。

 

 最後に、オフコースのシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。

1 Yes・No 

2 愛の中へ  

3 愛を止めないで

4 さよなら 

5 眠れぬ夜 

6 言葉にできない 

7 Call  

8 時に愛は  

9 君住む街へ 

10  風に吹かれて

★=80年代発売