80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.363
Love Letter 酒井法子
作詞 尾崎亜美
作曲 尾崎亜美
編曲 佐藤準
発売 1989年4月
女性アイドルが一度はお願いする尾崎亜美作品は、元気なノリピーから大人の歌手への転機となった10thシングル
1987年2月『男のコになりたい』でアイドル歌手としてデビューした酒井法子。このデビュー曲はオリコン最高6位を記録し、順調すぎるスタートを切りました。同年デビューのライバルとしては、立花理佐、畠田理恵、BaBeなどがいましたが、酒井法子はその中でもアイドル路線のど真ん中を突き進んでいきます。「のりピー語」といわれた奇妙な言葉を駆使し、いかにも10代の女の子という感じの独特の可愛らしい文字を操り、独特の元気でかわいいのりピーというキャラクターを作り上げていったのです。
アイドル歌手としてのその後の活動も順調そのもので、企画物のカセットシングルを除けば、出す曲出す曲オリコンのトップ10入り。『夢冒険』(1987年11月)、『GUANBARE』(1988年2月)、『1億のスマイル』(1988年5月)、『HAPPY AGAIN』(1988年9月)、『ホンキをだして』(1989年1月)といった青春応援ソングが定番になり、それがアイドル酒井法子の立ち位置になっていきました。そんな中でリリースした10thシングルが『Love Letter』です。そろそろ元気路線から脱して、大人の歌へと移行していかなければならないだろうという時期、新曲を依頼したのが尾崎亜美でした。80年代のアイドル歌手にとって、そろそろ路線を転換させようという時期によく起用されたのが尾崎亜美だったように思います。松本伊代の『時に愛は』、河合奈保子の『微風のメロディー』、岡田有希子の『二人だけのセレモニー』、松田聖子の『天使のウインク』、新田恵利の『内緒で浪漫映画』など、ちょっと路線を変えて一段階大人の歌手へと転換していきたいというときにことごとく起用されています。『Love Letter』もまさにそんな転換を感じられる曲で、元気いっぱいののりピー路線から、しっとりとしたラブソングを歌える酒井法子へとステップアップしていく、そんな意図が感じられる楽曲になっていました。
歌詞はというと、これがなんとも切ないのですよね。ただ歌の主人公である女性を思ってせつないというよりは、彼女に好意を寄せる男性の気持ちを思ってせつなくなるのです。
《さよならのつもりで上げた 右手がおろせなくなるわ ごめんね まだ少し胸のどこかに
あの人がいる 雪の日 渡されたまま読めなかった》
この男性と会っていて、それもおそらく二人で会っているのでしょうが、まだ前の彼のことを忘れられないこの女性。おそらくラブレターと思われる手紙を渡されていながら、読めていないのです。
ここで放つ男性の言葉がせつなすぎます。
《片想いは慣れっこさと 暖かな笑顔がせつない 季節に立ち止まってた わたしをどうか叱って》
男性からしても、まだ彼女の気持ちが自分にないことは分かっているのです。
《バイクの音に顔を伏せ あの人はもういないって 心に言い聞かせては あきらめきれずにいた》
ここでも前の彼のことを引きずっている気持ちが吐露されています。
ところがそんな心も、春の訪れとともにほぐされていくのです。
《ほんとは暖かな胸で 泣きたかった》
《ごめんね 長いこと あなた 待たせてしまったけど》
《Love Letter 君の痛みを溶かしたいから そんな文字が涙でにじんでく 届いたの胸に》
もらった手紙を読んでぐっときたのでしょう。そして今度は私からあなたへのラブレター
《Love Letter きっと花びらで書くわ 風の中で 生まれ変わる日が来たのね
あなたへのLove Letter 受けとって Love Letter》
というわけで、めでたしめでたし。この男性の気持ちが通じたのです。ちょっとした恋愛ドラマのようなストーリーが展開されていて、なかなかドラマティックではありませんか?この曲もオリコン最高5位を記録し、大人の歌手への転換の第一歩を無事通過することができたのでした。
この後、16thシングル『イヴの卵』までトップ10を堅持したあと、しばらく売上は下降線期に気言っていきます。シングルを出すたびに次第に順位も売上も低下し、酒井法子も歌手としてはそろそろ終わりかと思われた1995年5月、起死回生の一発『碧いうさぎ』が放たれ、もう少しでミリオンの99.7万枚という自己最高のセールスとともに、紅白歌合戦出場までも果たしたわけです。まさに芸能人生におけるピークに達した酒井法子でしたが、この後にどん底に落ちるあの事件が起きるわけです。
最後に、酒井法子のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。
1 あなたに天使が見える時
2 Love Letter ★
3 GUANBARE ★
4 1億のスマイル ★
5 ホンキをだして ★
6 HAPPY AGAIN ★
7 ダイヤモンド・ブルー
8 碧いうさぎ
9 ノ・レ・な・いTeen-age ★
10 さよならを過ぎて ★
★=80年代発売
あと2回で予定のvol.365に到達です。
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