80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.362

 

星屑のエンジェル 中山秀征

作詞 八田雅弘

作曲 八田雅弘

編曲 佐藤準

発売 1987年1月

 

 

年齢やキャリアに応じて軸足を変えながら芸能界を巧みに生き抜く秀チャンがアイドル的存在だった頃に放ったシングル曲

 

 中山秀征が最初に人気が出るきっかけとなったのが、ABブラザーズというコンビを組んで、アシスタントとして出演した小堺一機の番組「ライオンのいただきます」です。ですからこの時の世間的な認識とすると、若手のお笑いコンビのうちの一人といった感じでした。しかし愛想がよくてルックスも可愛らしい感じの中山秀征は、自然とアイドル的な人気を博するようになると、必然的に主演ドラマや歌手デビューといった話になってきます。1985年のドラマ「ハーフポテトな俺たち」で主演を果たし、翌1986年9月『明日にONE WAY』で歌手デビューを果たしたのでした。このデビュー曲はオリコン最高40位に終わりましたが、今回とりあげた2ndシングル『星屑のエンジェル』はオリコン最高25位にまであがり、中山秀征の人気ぶりを示す結果となったのです。

 

 歌手中山秀征ですが、これがなかなかイケるというのが最初の印象でした。歌唱力も思った以上でしたし、歌声がまたカッコイイのです。そして曲自体も、いかにもイケメンアイドルが歌うような、かっこいい系の恋愛ソング。歌う姿もかっこつけた振りを入れながら、シリアスな表情で歌っているので、お笑いコンビの片割れという立場は一切消し切っています。ABブラザーズとしてはお笑いをやりながらも、ピンになると人気アイドルへと演じ分けている…今思うとこのその場その場での演じ分けこそが、中山秀征が常に芸能界の一線で活躍し続けてきている根底にあるのではないかと思うわけです。

 

 さて『星屑のエンジェル』ですが、作詞作曲とのに八田雅弘が担当しています。八田雅弘はそもそもSKYという男性デュオで活躍していて、『君に、クラクラ。』が8.2万枚というスマッシュヒットになっていますが、この頃は作詞作曲家としての活動が中心となっていました。ただ作詞はあまり多くなく、中心は作曲の方。その中でヒット曲となったのは、高井麻巳子『シンデレラたちへの伝言』『約束』『かげろう』があります。

 

 《銀河の向こうでたたずむ君の濡れて光る横顔の 訳さえ聞けずに 唇で途切れそうな言葉つないだ》

いきなり銀河の向こうといった、SF映画的なフレーズでスタートする歌詞ですが、実際は悲しみに沈んでいる君の悲しみをなんとか塞き止めてあげたいといった愛の歌になっています。とにかく思いが熱すぎて、くさい行動のオンパレード。胸の中に抱き寄せたり、沈んだ君に歌を聴かせたり、踊りを踊ったり…。完全に二の線を行く中山秀ちゃん、そんなことをやっていたのですよね。今からすると笑ってしまうほどの成り切りぶりでしたが、それが当時の中山秀征に求められていることだったわけですよね。

 

 ただ次のシングルは1993年になりますので、歌手中山秀征としての活動はここで一旦区切りをつけたことになります。格差が出たうえに、そもそも方向性が全く違っていたABブラザーズも解散し、中山秀征は俳優業から、バラエティに主軸を移していきます。多くのバラエティ番組で賑やかし要員、クイズの回答者、リアクション要員として重宝されていきます。そしてキャリアを重ねていくと今度はさらに司会業へ進出、今に至るわけです。まさにその年齢その年齢で求められる中山秀征の姿に合わせて、芸能界を巧みに泳ぎ続け、一線で活躍し続ける姿は、恐れ入りますとしかいいようがありません。その求められる自分になりきる原点が、アイドル歌手としての中山秀征にあったのではないでしょうか。