80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.360
恋しくて 白田あゆみ
作詞 夏裕人
作曲 都志見隆
編曲 船山基紀
発売 1987年9月
モモコクラブの中心メンバーとして活躍を経てデビューした白田あゆみのイメージにぴったりな爽やかなデビュー曲
1980年代半ば、全盛にあったおニャン子クラブに対抗するかのように、雑誌から始まりテレビ番組と連動した形で、アイドル予備軍として結成されていたモモコクラブ。酒井法子、畠田理恵、伊藤美紀、姫乃樹リカらを輩出しましたが、今回取り上げた白田あゆみもモモコクラブ出身。モモコクラブの中で人気メンバーであった白田あゆみは、その下地を経て1987年歌手デビューを果たしました。そのデビュー曲が『恋しくて』です。
自由気ままで賑やかなおニャン子クラブに対して、モモコクラブは可愛らしくて行儀のよい清純派の女の子というイメージで、その中で白田あゆみも当然その路線の上にある曲でデビューとなったのです。確かにルックスはアイドルらしい可愛い印象で、歌もそつなくこなしていたので、『恋しくて』は楽曲的にもまさに正統派のアイドルソングでした。オリコンの最高位は26位と、同じ年にデビューした酒井法子や伊藤美紀と比べるとやや伸び悩んだものの、スタートとしては悪くはないといったところでした。
『恋しくて』の作詞は夏裕人。あまり他の楽曲での実績がなく、詳しい情報は分かりません。期待の新人のデビュー曲ということで、大抜擢といった感じだったのかもしれません。一方の作曲の都志見隆はヒット曲をたくさん手掛けてきた作曲家なので、こちらは安心してまかせたというところでしょう。歌詞をみると、完全な片想い失恋ソングです。それも女の子の歌ではときおりある、好きな相手が別の女の子と一緒にいるのを偶然街で見かけてショック!というパターンのやつですね。南野陽子『話しかけたかった』、小川範子『涙をたばねて』とかと同類の歌です。
《バスストップで偶然に あなた見かけた 傘の中 腕を組んでたね》
といきなり決定的で悲しい現実を突きつけられたこの女の子ですが、もともと
《あの人と夏のビーチで知り合った 噂聞いたわ あれ以来電話もかけてこない》
と、こんな状態だったので、覚悟はあったのかもしれません。ひと夏の恋として楽しんで終わりだったあの人に対し、夏を過ぎてもその恋を引きずっている私。そんな構図が見えてきます。
《You & Me 約束は何もないね You & Me 友達同士でいただけね》
《Pure 優しくするから Pure 心が揺れたの》
と遊び慣れた誰にでも優しい男の子に、初心な女の子が心を乱されただけという、女の子からしたらなんとも切ない片想いだったというわけです。
《彼女にピアス贈ったの 知っていたけど》
と、彼女がいたのも知っていたわけなりですが、やはり彼女と一緒のところを目の当たりにしたことが、ショックだったと、そんなところでしょう。
こんな感じで、女性アイドルのデビュー曲としては王道といってもいい『恋しくて』でスタートした白田あゆみでしたが、2ndシングル『Remember Me』(1988年1月)がオリコン最高29位となったものの、3rdシングル『あいつ』(1988年4月)がオリコン93位と、たった3ヶ月の間で大きくダウン。結局この曲が最後のシングルとなり、1989年には芸能界を引退。あっという間に消えていってしまいました。芸能界への執着が本人にあまりなかったのかもしれませんが、素材としては惜しかったです。