80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.355

 

デイ・ドリーム・ビリーバー THE TIMERS

日本語詞 ZERRY

作曲 ジョン・スチュワート

編曲 THE TIMERS

発売 1989年10月

 

 

過激なパフォーマンスで話題を呼んだ忌野清志郎率いる4人組覆面ゲリラバンドによる、モンキーズナンバーなカバーソング

 

 忌野清志郎という人は母体のRCサクセション以外にも、時折別のミュージシャンと組んでゲリラ的活動をすることがありましたが、このTHE TIMERSもその一つ。もっとも設定自体は忌野清志郎に"よく似ている人物"ZERRYということらしくて、そのあたりはジョーク的な感じを出したかったのではないでしょうかね。格好も学生運動とか過激派とかを想像させるようなヘルメットをかぶったり、土方作業員風の作業服や地下足袋姿、或いは和装姿だったりと、かなり突飛な衣装を着て活動をしていました。

 

 THE TIMERSという名前もザ・タイガースをもじったものらしく、忌野清志郎が名乗ったZERRYという名前も、どうやらジュリー(沢田研二)を意識したものらしいです。ただその結成のきっかけとなったのは、ジョークとはほどとおい、なかなか過激な主張があったようで、コンサートだったりラジオ放送だったり、いろいろ騒ぎも起こしたようです。まあ、いろいろ逸話が残っているようで、このあたりの過激な感じは特異なファッションともリンクしてきますね。

 

 で、そのTHE TIMERSとしての最初のシングルが今回取り上げた『デイ・ドリーム・ビリーバー』になるのですが、この原曲は1967年にモンキーズが発売したシングル『Daydream Believer』で、そのカバー曲ということになります。原曲は4週連続で全米1位を獲得したヒット曲ということもあり、そのタイトルを知らなくても、どこかで聴いたことがあるなというような曲でした。THE TIMERSの『デイ・ドリーム・ビリーバー』もオリコン最高2位、売上15.1万枚というヒットになったのでした。

 

 ただそんな結成にまつわる過激な部分とは裏腹に、この日本語詞を読むと、去った彼女を思い出して、あの頃はよかったなと懐かしむような、せつなくも懐かし気な優しい歌詞になっているのですよね。

 《もう今は 彼女はどこにもいない》

といきなり最初で、彼女がいくなった状況を説明しておいてから

《朝はやく 目覚ましが鳴っても そういつも彼女と暮らしてきたよ ケンカしたり 仲直りしたり》

と、同棲をしていたらしきこと、山あり谷ありしながら仲良く過ごしてきたことが示され、じわりと今の寂しい心境がここで伝わってきます。

《ずっと夢を見て 安心してた 僕はDay Dream Believer》

Day Dream Believerを直訳すると白昼夢を信じる人ということになるのでしょうか。彼女といる間は、おそらく夢心地だったのでしょうね。

《でもそれは遠い遠い思い出 日が暮れて テーブルに座っても

 Ah 今は彼女 写真の中で やさしい目で 僕に微笑む》

とこのあたりは、別れた寂しさと同時に、あの頃はよかったなと懐かしむような、そんな言葉に聴こえてきます。それが

《ずっと夢を見て 幸せだったな》

そして今もなお

《ずっと夢を見て 今も見てる》

ということで、幸せだった二人で暮らした時代を忘れられないのでしょうね。それがけっして女々しくなくて、むしろ素敵に感じられるのが、清志郎のマジックなのかもしれません。原曲の歌詞とはまったく異なる独自のものになっているようですが、既存の曲にもオリジナルな歌詞をのっけて自分たちのものにしてしまうところは、さすが忌野清志郎といったところです。

 

ちなみにTHE TIMERSは1989年12月にも『ロックン仁義』というシングルを出していますが、こちらは28位どまりでした。