80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.353

 

Super Chance 1986オメガトライブ

作詞 売野雅勇

作曲 和泉常寛

編曲 新川博

発売 1986年8月

 

 

ボーカルにカルロス・トシキを迎えた新生オメガトライブの第2弾シングルも、期待を裏切らないリゾート感あふれる夏のラブソング

 

 杉山清貴&オメガトライブとしてヒットを連発した後、新しいボーカルとしてブラジル出身のカルロス・トシキを迎えたオメガトライブは、その最初のシングル『君は1000%』(1986年5月)がオリコン最高6位、売上29.3万枚といういきなりのヒットとなりました。そして同時期にソロデビューした杉山清貴も『さよならのオーシャン』もヒットとなり、袂を分かつことになった両者がともにヒットスタートという素晴らしい再スタートとなったわけです。この両者は、杉山清貴&オメガトライブ時代のイメージを大きく崩すことなく、リゾートとシティを舞台にしたトレンディなラブソングというラインをともに継続していったということでも、興味深い分裂のケースとなりました。

 

 そんな中で新生1986オメガトライブの特徴はというと、なんといってもカルロス・トシキのたどたどしい日本語にあるでしょう。普通だったら日本語を歌わせないか、歌だけでももっと流暢に聴こえるようにさせるところなのでしょうが、そのたどたどしさを「良し」として歌わせたことが逆に個性となって生きた稀有な例かもしれません。

 

そんな1986オメガトライブとしての2弾シングル『Super Chance』は『君は1000%』と同じ、海を舞台にしたリゾート・ラブソングで、このあたりの前身から引き継いでいるところは、前述の通りです。特にこの作品は8月発売ということで、より夏を明確に意識した歌詞となっていて、まさに期待されているものを裏切らない作品となっていました。そしてこの曲もオリコン最高2位、売上20.0万枚というヒットとなったのです。

 

時代はバブル絶頂期に向けてまさに昇り続けているイケイケの時代。こういったリゾートを舞台にしたラブソングというものが大量生産され、カーステレオでガンガン流されていましたが、時代の需要にもそんな曲がぴったりだったのでしょう。聴き心地がよくてBGMとして邪魔にならない、それでいてキャッチーなメロディとトレンド感のある歌詞、『Super Chance』は当時のそんな要求を満たすには最適な楽曲だといえそうです。

 

《Off shore 琥珀(ぎん)色の細波が 海の背を走る Sun set 傾いたデッキにも西風さ 夏が終わる》

と冒頭のフレーズで、舞台が夏の終りの海を走る船の上であることが示され、いきなり心はリゾートモードに。

《口説かせる隙を君は 一度も見せないね》

男性はなんとか意中の女性に誘いかけようとタイミングを見計らっているのですが、女性はその隙さえみせないようです。ところがそれでいて思わせぶりな仕草で男性を刺激してくるのです。

《Ah Super Chance 悪戯っぽくウインクしたね「嫌いよ…」と》

これぞまさに絶好の機会、Super Chanceと感じたことでしょう。

《Moon light 真夜中のプールまで 誘ったよ 最後の夜》

意を決して最後の夜に、彼女を誘った男性。

《短すぎる二人の夏は 君の嘆きだけ残した》

《臆病なひとだね この胸飛び込めない》

《逢えたことを忘れないでと 君は眼を伏せた》

しかし結局二人は結ばれることなく、夏を終えていくのです。女性には恋人が待っていたのでしょうか。リゾートで出会った二人の恋は、お互いに好意を持ちながらも、ひと夏の恋で終わってしまう、そんな寂しさが、和泉常寛のメロディーとカルロスのたどたどしい歌い方が、より増長させてくれる、そんな風に思うわけです。そんな意味では刹那的なバブルの時代に相応しい作品ではなかったでしょうか。

 

 その後1986オメガトライブは5thシングルまでを発売し、いずれもオリコン10位以内に入るヒットとなりますが、再びバンド名を変更し、カルロス・トシキandオメガトライブとしても2曲のトップ10入りヒット曲を送り出すなど、1986~88年頃の日本の音楽界に足跡を残していったのでした。