80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.349

 

流れ星が好き  松本伊代

作詞 尾崎亜美

作曲 尾崎亜美

編曲 小林信吾

発売 1984年5月

 

 

松本伊代の尾崎亜美作詞作曲の第3弾、2作前にヒットした『時に愛は』と同路線ながらなぜか売れなかったものの、女の子の恋心がひしひしと伝わる名曲

 

 私が高校時代に一番好きだったアイドルが、実は松本伊代だったのです。松本伊代というとデビュー当初の不思議ちゃん的な楽曲『センチメンタル・ジャーニー』(1981年10月)、『TVの国からキラキラ』(1982年5月)あたりの印象が強いのですが、実は名曲佳曲が多く、それもどちらかというとアイドルとしての勢いが下降気味になってからにいい曲が揃っているのですよね。

 

 レコードセールスをみた時、いわゆる82年組といわれる同期たちと比べると、松本伊代は連続してオリコンのトップ10ヒットが続くということがほとんどなく、売れた曲の後は一旦売上が下降して、作品に恵まれるとまた息を吹き返しといった感じが続いていたのです。具体的にはデビュー曲『センチメンタル・ジャーニー』が最高9位、次のトップ10入りが5thシングル『抱きしめたい』(1982年11月)の9位、さらに次のトップ10入りが9thシングル『時に愛は』(1983年11月)の8位。ここからしばらく尾崎亜美作品が続いていくのですが、唯一の連続トップ10入りとなったのが10thシングル『恋のKNOW-HOW』(1984年2月)の10位と、これが最後のトップ10入りの作品となっています。ただその後2作がともに24位といよいよ人気下降が顕著になったかと思わせたところで、13thシングル『ビリーヴ』(1984年11月)が11位とまた息を吹き返すという、かなり楽曲の出来に左右されるセールスを見せていました。

 

 そんな中で今回取り上げた『流れ星が好き』ですが、『恋のKNOW-HOW』の次の11thシングルとして発売されましたが、前述のように、松本伊代のシングルとしては初めてトップ20にも入らないオリコン最高24位と、実はセールス的には惨敗という結果に終わっています。ただなぜこの曲が売れなかったか、未だによく分かりません。尾崎亜美と組んでからの第3弾となるシングルですが、尾崎亜美とはバラード系とテンポのある曲と交互に第4弾までリリースしています。この『流れ星が好き』は、起死回生のヒットとなった尾崎亜美作品第1弾『時に愛は』と同じ路線のせつなげなラブバラードで、最初に聴いた時も、これまたいい曲できっとヒットするのだろうなと思い込んでいました。ところがふたを開けてみると最高24位、当時彼女を応援していた身としては、これはかなりショックだったのです。理由があるとすれば、同じ路線で飽きられてしまったということかもしれませんが、それにしては極端すぎるのです。個人的には抽象的な歌詞の『時に愛は』よりも、むしろ具体的なシーンを想像できる『流れ星が好き』の方が、より女の子のせつない恋心が伝わってきて好きなのですよね。当時自転車で通学していた私ですが、日暮れが最も遅くなる6月ごろの夕暮の帰り道で、この曲を口ずさみながら自転車をこいでいると、歌詞と風景が重なり、ほんとうに自分までが切ない気持ちになってきたものです。

 

 《あなたに呼び止められた時 夢かと思った 息が止まるかと思った》

《ポストに入れられぬ手紙が 机の引き出しにひとつ置き去りになってる》

《放課後のベンチには夕映えが ふたりを揺らすの》

《送って行くよと照れ笑い わがまま言わせて 今日は遠まわりしたいの》

おそらく女子高校生あたりでしょう、好きな相手に気持ちを打ち明けられずに悶々としていたある日、思いがけず呼び止められてびっくり。それから放課後や帰り道を一緒に過ごすようにまでなり、さらに好きな気持ちがどんどん募っていくそんな女の子の気持ちが実によく伝わってくる歌詞だと思いませんか?

《バスを降りる頃は 街灯が灯るでしょう もしかしたら星に ありがとうって言えそう》

と、このあたりは「神様、彼とうまくいかせてくれてありがとうございます」という世界ですね。

そして歌の最後の

《だから流れ星とそしてあなた あなたが好き 流れ星とあなたが好き 流れ星とあなたが好き》

での「あなたが好き」の3連発。松本伊代のファンだったら完全にノックアウトでしょう。本当にこの曲が売れなかったわけがわからなく、それがかえって印象に残ったのかもしれません。ということで、埋もれさせたくなく敢えて売れなかった曲を取り上げた次第です。

 

 ただこの後、前述の『ビリーヴ』あたりでアイドルとしての松本伊代は落ち着きを見せ、このあとはボーカリスト松本伊代として、それまでとは違った大人の名曲を残していくことになります。あまり歌唱面で評価されることはないイメージの松本伊代ですが、そのころになると歌唱力も多少なりとも上達し、他の人にはない独特の個性的な歌声を生かした楽曲がひそかに評価されるようになっていきます。最高でもオリコン40位近くにまで低下していたセールスが、再びトップ20内に続けて入るようになっていくのですから、一度低落したら二度と浮上するのが難しいアイドル歌手の中では、かなり長期にわたって粘り強く歌手活動を続けていたといえるでしょう。以下に好きな松本伊代の曲ベスト10を記していますが、そのころの楽曲も多数含まれています。参考まで。

 

 

最後に、松本伊代のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。

1 流れ星が好き 

2 すてきなジェラシー  

3 信じかたを教えて 

4 時に愛は  

5 サヨナラは私のために 

6 恋のKNOW-HOW 

7 ビリーヴ 

8 Sonatine 

9 TVの国からキラキラ 

10  ラブ・ミー・テンダー 

 ※11位 思い出をきれいにしないで  もいい曲です。

★=80年代発売